発足から3か月の野田佳彦政権が、早くも「行き詰まり」の様相を見せ始めた。火種は、一川保夫防衛相ら2人の閣僚への問責決議案提出問題だ。
野田首相の頭の痛いところは、この閣僚が2人とも小沢一郎・元民主党代表グループだということだ。切りたくても簡単には切れない一方、続投は党内に混乱を呼び、現在浮上中の「民主分裂・新党結成」構想を加速させかねない危険性をはらんでいる。
与党・国民新党までが野田首相へ「反旗」
野田首相は2011年12月5日の衆院予算員会で、沖縄をめぐる「不適切発言」問題を抱える一川防衛相の進退について、「これまで以上にえりを正して職責を果たしてほしい」と続投させる考えを示した。一川氏本人も辞任を否定している。
自民党は、一川防衛相への問責に加え、マルチ商法業界からの献金問題が指摘されている山岡賢次・国家公安委員長に対する決議案も参院へ同時提出する方向で公明党と調整を進めている。
ただでさえ参院では与党の過半数割れなのに、与党・国民新党の下地幹郎幹事長までが5日、野田首相へ「反旗」を翻した。一川防衛相への問責決議案が提出された場合、「(国民新党が)否決に回るのは国民に認められない」と決議案可決を容認する考えを記者団に示した。
問責決議に法的な拘束力はないが、可決されれば政権運営の大きな足かせとなるのは間違いない。国会審議が極めて進みにくくなるからだ。
一川氏も山岡氏も小沢派だ。9月の野田内閣発足後、小沢元代表が「バランスのいい人事だ」と評した「肝(きも)」とも言える2人で、野田首相としても簡単に切るわけにはいかない。
「では、小沢派から後任大臣をまた出してもらえばいいじゃないか」とも思えるが、事はそう簡単には進みそうにない。今の小沢派に野田政権に助け船を出す「義理」はないからだ。
消費増税とTPP(環太平洋経済連携協定)参加へ前のめりの野田首相に対し、小沢元代表は何度も対決姿勢を示す発言をしており、民主党内はぐらつき始めている。