こびりついて落ちない鍋や食器の汚れなどを「つけ置き洗い」する人は少なくないだろう。そのほうが、汚れが水にふやけて落ちやすいからだ。
ところが、食後の食器を10時間、水につけ置きすると、ブドウ球菌や大腸菌の一種など菌の数は約7万倍に増殖するとの実験結果を、菌やカビについて調査研究している「衛生微生物研究センター」がまとめた。食器のつけ置き洗いは菌が増えやすいと注意を呼びかけている。
女性の32%が食器を10時間以上放置した経験がある
衛生微生物研究センターが行った実験は、7~8月に、水を張ったボウルに肉や魚、ごはん、野菜をそれぞれ1~5グラム入れ、食器とともに室温で10時間放置した。その結果、食器をつけた水にブドウ球菌や大腸菌の一種などが増えて、「キッチンの排水口並み」になった。
食器にも同じぐらいの菌が付着しているとみられ、スポンジに洗剤をつけて洗っても、最大でも1000分の1程度にしか菌が減らなかった。また、弁当箱のふち部分など、洗いにくい個所は菌が残りやすいため、10分の1程度にしか減らなかったという。
こうしたことから、汚れが落ちやすいと思われていた「つけ置き洗い」は、長時間置いておくと衛生面でよくない結果を招くことがわかった。
とはいえ、鍋や食器などにこびりついた汚れを落とすのは大変だ。ひと晩つけ置きしても結局汚れが落ちず、翌朝スポンジに洗剤をつけてゴシゴシ洗うことになったりする。
一方で、同センターが別途180人の女性に行ったインターネット調査では、32%が食後の食器を10時間以上放置した経験があると答えており、「つけ置き洗い」は日ごろからよく行われているようだ。
李憲俊所長は「菌が繁殖しやすい温度は20~35度と幅広く、冬も食中毒には注意が必要だ」としている。厚生労働省の調べでも、2010年の食中毒患者数は2万5972人で、このうちの4割以上が冬に起きている。