「研究報告書を焼き捨ててしまえ」
実験で生まれた新種のウイルスがヒトに感染する、またはヒト同士で流行するという点は証明されていないようだ。だがフェレットという動物は、一般的な「季節性インフルエンザ」の感染を調べる実験で用いられることが多い。フォーチア博士は米科学メディアに、「フェレット間でうつるインフルエンザは、ヒトにも同じことが起きうる」と話している。万一、この恐ろしいウイルスが実験室から漏れ出せば、空気中に漂っているだけでも感染することから、あっという間に大流行することも考えられる。
フォーチア博士が変異ウイルスをつくりだしたことに、非難の声も上がっている。ツイッターを見ると博士に向けて、
「愚か者。悪人の手に渡る前に彼の研究報告書を焼き捨ててしまえ」
「何をバカなことやっているんだ」
「お前のことを殴ってやりたい」
と辛らつな投稿が並ぶ。米メディア「NPR」(電子版)は、生物兵器によるテロを研究するバイオセキュリティーの専門家が「致死性のウイルスを、感染しやすい性質に変えてしまうというのは、科学者にとって好ましくない考え方だ」と、暗にフォーチア博士を批判したコメントを引用した。
これに対して、米ミネソタ大学感染症研究センターのマイケル・オステルホルム所長は、フォーチア博士の実験を「大変重要だ」と評価する。H5N1ウイルスが大流行する可能性を軽視する専門家にむけて再考を促すきっかけとなる効果があるというのだ。