石油ストーブの増産が続いている。大手家電量販店などでは前年比で2~4倍増もの売れ行きをみせており、一部で見られる品薄感もなお解消されていない。
定期点検後に停止している原子力発電所の影響で関西電力や九州電力は2011年の冬も家庭への節電を要請するが、節電と防災への備えとして、冬本番を前に売れに売れている。
石油ストーブに「1台3役」の魅力
石油暖房機器などを製造・販売するコロナは、大手家電量販店やホームセンターからの引き合いが2011年4月の段階からあり、6月から増産体制に入っている。しかし、「まだ、体制を解くような状況ではありません」と話す。
石油ファンヒーターで前年比2割増、電気を使わない石油ストーブは同6割増で生産していて、同社では売上げ全体で前年(約800億円)よりも約70億円の増収を見込んでいる。
同社は、「石油ストーブは、暖房はもちろん、災害時には灯りの代わりになり、簡単な煮炊きもできます。1台3役が見直されていて、リバイバル的な注目のされ方をしているようです」と話している。
急ピッチで生産が進められているものの、石油ストーブの出荷台数の伸び率は足もとでは鈍化している。日本ガス石油機器工業会によると、2011年9月の出荷台数は46万2000台。10月は44万9000台と伸び悩んだ。あまりに需要が多すぎて、「生産が追いつかないため」とみている。
一方、石油ファンヒーターの10月の出荷台数は64万3000台で、前月に比べて67.4%増と伸ばした。
また、市場調査のジーエフケー マーケティングサービス ジャパン(GfKジャパン)の調べでは、10月の石油ストーブの販売台数は前年比4.4倍も増えた。「石油ストーブは例年、12~1月に最も売れるのですが、今年は10月の段階ですでに昨年12月の実績を上回っていて、かなりの売れ行きです」と話している。
防災への備えとして購入していく人が多い
家電量販店「ケーズデンキ」などを展開するケーズホールディングスによれば、石油ストーブの販売台数は「10月で例年の4倍増。足もとで6割増しの状況」という。売れ筋は1万3000円~1万5000円の製品で、「節電というよりも、防災への備えとして購入していく人が多いようです」と話す。
「冬の節電」は東北・関東よりも関西以西で厳しいが、「電気を使わない石油ストーブの売れ行きは東日本が中心です」という。
石油ストーブが売れるなか、気になるのが灯油の小売価格だ。灯油の小売(店頭)価格は11月に入って4週連続で値上がりしている。10月31日に1缶(18リットル)1582円だったが、11月28日には1603円と、21円上昇した。
ただ、石油情報センターは「最近の価格上昇は、国際的な原油価格の上昇が原因です。原油は景気の見通しがよくなると上がりますが、今のところ欧州危機の状況が一進一退なので、少なくとも今シーズンに急激な価格上昇はないでしょう」と予測する。
「この冬は供給量が伸びることがわかっていましたから、元売りも前年に比べて十分な在庫をもっています」と、灯油が在庫切れになる心配はないようだ。