秋口から冬にかけて最盛期を迎える、茨城県の名物料理「あんこう鍋」の売り上げが激減している。
背景には、茨城県にほど近い福島第1原発の事故の影響があるようだ。
「2010年の3割程度しか予約が入っていない」
あんこうは11月から3月が旬で、特に1月から2月がもっとも美味しい時期とされている。茨城県内各地での漁獲が盛んで、特に北茨城市の平潟、日立市の久慈浜漁港の水揚げが多い。北茨城市観光協会の公式サイトでは「北茨城の魚のシンボル」として紹介され、市内約60の旅館や民宿、食堂などであんこう鍋が提供されている。
ところが2011年の冬は売り上げが減っているという。観光協会によると「具体的な数字はわからないが、各民宿から減っているという報告は受けています」。北茨城市商工会によると「11月下旬から2月の民宿の予約が2010年に比べて3割程度にとどまっており、それにともなってあんこう鍋の売り上げも減っています」という。
理由は「風評被害」だという。北茨城市は福島第1原発から80キロ圏内に位置している。民宿などで使用する食材は当然放射性物質の数値が検査基準を下回っているが、それでも原発に近いという理由で敬遠されているというわけだ。
売り上げ回復へアンテナショップやイベント開催
売り上げを回復させるため、観光協会では北茨城民宿組合と協同で、11年10月に栃木県宇都宮市で期間限定のアンテナショップを開いたが、再び12月にも設ける。11月25日には東京タワー(東京・港区)で「茨城あんこうフェアin東京タワー」を開催、あんこう鍋の販売やあんこうつるし切りの実演もした。こうしたイベントやメディアでの紹介への反響は徐々に増えているといい、「問い合わせが増えているので、少なからず客の増加にはつながっていると思います」(観光協会)。
また、商工会でも12年度にキャラバンを実施し、北茨城産の食材の安心・安全を近隣の自治体などに訴えていくという。