国際線の旅客機が管制官の許可を受けずに離陸するというトラブルが発生した。今回は、他の飛行機との距離が十分にあったため大事には至らなかったが、過去にもいくつか同様の例がある。無線の設定といった、いずれもちょっとしたミスが原因になっている。ケアレスミスを繰り返せば、大事故につながりかねない。
現時点では「聴取内容が、まとまっていない」
国土交通省の発表によると、トラブルを起こしたのは、関西空港発上海(浦東)空港行きの中国東方航空516便(エアバスA330-200型機、乗員乗客245人)。2011年11月28日13時50分頃、同機はA滑走路に向けて移動中に管制官から滑走路内で待機するように指示を受けていた。ところが、管制官が関西空港に着陸予定のヘリコプターと交信している間に滑走を開始。直後に、管制官はすぐに停止するように指示したが、そのまま離陸した。前後を飛行していた飛行機とは十分な間隔があったため、特に安全上の問題は発生していないという。
国土交通省は航空法違反の疑いで同社から事情聴取を進めているが、「聴取内容が、まだまとまっていない」(管制課)として、トラブルの原因は現時点では明らかになっていない。
中国東方航空のスポークスマンも、新華社通信に対して「現在調査中」と述べるにとどまっている。
なお、同様のトラブルは1~2年に1回程度の頻度で起こっており、無線のトラブルが原因になっているものが多いようだ。
1年半前には無線設定ミスで「無許可着陸」
例えば10年4月25日には、大連発成田空港行きの中国国際航空951便(ボーイング737-800型機)が、管制官の着陸許可を受けずに着陸。無線で交信するための周波数を切り換え忘れたことが原因だとみられている。
08年2月22日には、福岡空港発仁川空港行きのアシアナ航空131便(エアバスA330型機)が、管制官の許可を受けずに離陸。通常よりも長い時間にわたって無線が混信しており、管制官とパイロットのお互いの声が聞き取りづらい状況だったという。管制官が西日本空輸のヘリコプターに離陸許可を出した後に、着陸予定の日本エアコミューター(JAC)機が交信してきたため、混信が発生。この間に、アシアナ航空が離陸を始めたという。アシアナ機が、ヘリに対する離陸許可を自らに対する離陸許可と勘違いをしたことが原因だとみられている。
さらに、実際の離陸には至らなかったものの、誤って滑走路に進入してしまうケースは、もっと多い。11年10月12日には、関西空港発ホノルル空港行きの米ハワイアン航空450便(ボーイング767-300型機)が、管制官の許可がないまま滑走路に侵入し、着陸しようとしていた全日空の貨物機が着陸をやり直した。
09年7月には、ジャルエクスプレス(JEX)2200便(MD-81型機)が伊丹空港の滑走路に許可なく侵入。管制官の「待機指示」という指示を、パイロットが「滑走路横断」と聞き間違えたのが原因だった。