圧勝の末誕生した橋下徹・新大阪市長は、「民意」をバックに大阪市職員との対決姿勢をヒートアップさせている。職員らの間には戦戦々恐々とした空気も流れる。
「民意を無視する職員は市役所から去ってもらう」。橋下氏は当選会見で、市職員らに対し、攻撃的な言葉を並べた。選挙戦で対立した市議会内反対派へは「いったんはノーサイド」と対決度合いを緩めたのとは対照的な物言いだった。
市議会へは「いったんはノーサイド」
2011年11月27日夜の当選会見で、橋下氏は市職員批判を大展開した。選挙戦中に言っていたことは本気だぞ、と再確認しただけではなく、一層熱を入れて「職員改革」の必要性を訴えた。
投開票前には、市職員の間には「楽観論」もあった。
橋下氏は、様々な批判を行っているが、「選挙で有権者受けするために、一種のパフォーマンスとして話しているのだろう」として、「実際に当選すれば、職員敵視を続ける訳もいかず、手を差しのべてくるのでは」というわけだ。
確かに、対立候補、現職の平松邦夫氏を支持・支援した民主党や自民党の市議団などに対しては、当選会見で「いったんはノーサイド」と呼びかけ、話し合いに応じる構えをみせた。
国政レベルの既成政党へも配慮を示した。これまでは批判を展開していたが、当選後は、「大阪維新の会」の国政進出について、「大阪都構想への(既成政党からの)協力が得られなければ(進出する)」とワンクッションを置いたのだ。
それに対し、市職員へは容赦がなかった。選挙戦の勢いのまま、ひょっとするとそれ以上の「熱さ」で、「政治に足を踏み込みすぎたと思っている職員は、潔く自主退職して頂きたい」「選挙で選ばれた者に対する配慮が欠けている」とまくし立てた。さらに、
「人事は市長直轄で」「職員の給与体系も見直す」
と「本丸」である人事とカネに踏み込むと宣言したのだ。
さすがにここまで対決姿勢を明言すれば、いくら「変わり身が早い」との評もある橋下氏とはいえ、その「本気度」は相当のものと見る向きが多そうだ。
市役所「脱出組」が増える?
橋下新市長誕生を見越し、すでに職員らの「市役所脱出」は始まっているとの指摘は既にあった。年2回の早期勧奨退職制度を利用して9月末に辞める職員が、例年なみだった2010年9月と比べ、2倍以上になったのだ。特殊要因がある交通局を除いても2倍近くの増加だった。
表向きの理由はさすがに「介護や体調不良」などだが、橋下新市長誕生後の「肩身の狭さ」を予測し、早期退職に踏み切ったのではとの憶測が広がっていた。
橋下氏と維新の会は、市長選の公約で「なれあい評価から決裂した適正な人事評価と給与への反映」「分限(処分)制度の積極活用により、職員数を大幅削減します」などと踏み込んでいた。
公約の金看板だった大阪都構想は、「2015年4月移行が目標」と、結果が出るのはまだ先のため、橋下氏がまずは職員改革の分野で「公約達成」を示しつつ、「人気取り」を図るのでは、との恐怖混じりの憶測が市役所関係者の間に広がっている。
もっとも、維新の会は、大阪市議会では第1党ではあるが、過半数には届いていない。「橋下新市長の好き勝手には出来ない」との声もある。
次に市役所の早期勧奨退職制度の適用があるのは2012年3月だ。利用者数は例年並みに落ち着くのか、それとも「脱出組」が相次ぐのだろうか。