サムスン頼みのリスクを下げる思惑
アップル側にも事情があるようだ。これまで、iPhoneやiPadに搭載されている半導体などの部品は、韓国サムスン電子から調達してきた。ところが両社は現在、互いのスマートフォンやタブレット型端末をめぐって「特許を侵害した」と訴訟合戦を繰り広げている。ドイツやオーストラリアでは、アップルの訴えを裁判所が認めて、サムスンに「ギャラクシー・タブ」の販売停止を命じた。一方日本をはじめ数か国で、サムスンが「iPhone 4S」の販売差し止めを求めて仮処分申請をしている。10月には、事態の打開に向けて両社のトップ会談が開かれた模様だが、先行きは不透明だ。
サムスンは、液晶パネルの世界的な有力メーカーでもある。調査会社ディスプレイサーチによると、2010年の中小型液晶パネルの世界シェアは、シャープに次ぐ世界2位。アップルに納入しているかは不明だが、ミセク氏のリポートによるとiPhoneなどに使われているフラッシュメモリーもサムスンから東芝の製品にシフトしつつあり、シャープとの連携強化で液晶も含めた「サムスン頼み」のリスクを下げようとの思惑があるとみられる。
シャープが2011年10月27日に発表した第2四半期(7~9月)決算によると、液晶事業では、米国を中心に60型以上の大型テレビの販売が急拡大、またパネルも大型サイズへの移行が進んで、売上高は前期比増となった。大型パネルを生産する堺工場の稼働率は、10~12月も90%超と高い数字をキープする見込みを報じたメディアもある。シャープ広報部に聞くと「当社が発表した内容ではない」と明言を避けたが、高稼働率を支えているのは「iTV」の生産、という見方ができなくもない。