「孫社長のスタンドプレー」と冷ややかな声も
米倉会長は「(理事の)みなさんの時間をとっていいのかという問題もある」などと述べて孫社長の発言を正面から取り上げず、最後は拍手で提言の 承認を求めた。この間、両氏の発言の応酬が何度も重なり、出席者が聞き取れない場面もあったという。
提言は拍手で承認されたが、孫社長は「少なくとも反対意見があった。満場一致で決まったわけではないことは議事録に残していただきたい」と発言。 米倉会長は孫社長の発言を遮りながら「はいはい。そういうことにいたします」と答え、理事会は終了した。
この論争については、21日の会見で米倉会長が「まったくかけ離れた理由で、理解に苦しむ理屈だった。単に反対だというのは困った発言だった」と批判。ここでも孫社長の主張に耳を傾ける姿勢を見せなかった。
米倉会長はこれまで記者会見やマスコミのインタビューなどで「東電は被害者の側面もある。政府が東電を加害者扱いばかりするのはいかがか」 「(原発が)千年に一度の津波に耐えているのは素晴らしいこと。原子力行政はもっと胸を張るべきだ」などと、東電や経済産業省を擁護する発言を繰り返している。
米倉会長の発言をめぐっては、経団連の内部からも異論があり、楽天の三木谷浩史社長は6月、「電力業界を保護しようとする態度が許せない」などとして退会した。この時、米倉会長は三木谷社長を慰留することもなかったという。孫社長は「経団連の中にも多様な意見がある。そういう多様な意見 を封じ込めてはならない。経団連の内部から異議を唱えていくことが必要だ」と、理事にとどまる考えだ。
ただ、今回のバトルについて経団連の幹部からは、「再生可能エネルギーをビジネスとして手がける孫社長のスタンドプレー」と、冷ややかな声も出ている。