経団連の米倉弘昌会長とソフトバンクの孫正義社長が原発の再稼働をめぐり、バトルを繰り広げている。発端は2011年11月15日に東京・大手町で開かれた経団連の理事会だ。
理事を務める孫社長が「1日も早く原発を再稼働させることが日本国民にとって、経済界にとって最優先であるかのごとき論調には異議がある」などと米倉会長を批判。米倉会長は21日の会見で、孫社長の発言について「本当に理解に苦しむような理屈だった。誰からも賛同を得られなかった」などと一蹴した。しかし、経団連の会員企業の中には孫社長を支持する声も一部にあり、今後も議論を呼びそうだ。
経団連の総意ではない、と主張
経団連の理事会は毎月定例で、経団連が年間100本ほど提出する政策提言や会員の入退会などを承認する。会員企業約1600社のうち、約500 社が理事を務めている。いつもの理事会の議事進行はシャンシャンだが、この日は熱を帯びた。
議題となったのは、経団連の「エネルギー政策に関する第2次提言」だった。この提言は「政府は原子力が今後とも一定の役割を果たせるよう、国民の信頼回復に全力を尽くさねばならない」「安全性の確認された原発の再稼働が極めて重要」などと明記。再生可能エネルギーについては「風力や太陽 光はコストが高く、出力も不安定なことから、短・中期的にベース電源等の役割は期待できない」と否定的なトーンで書かれていた。
理事会で孫社長は「この提言が経団連の総意であるかのごとく提言されるのは断固反対だ」と主張。「歴代の経団連の会長、副会長の多くは納入事業者として原発に関わってこられた。国民に甚大な迷惑をかけたということで、経団連としてあることは、まず最初にわびることだ」と力を込めた。
孫社長は「原発再稼働よりも優先すべき課題がある」などとする意見書を米倉会長に提出し、「安全対策の議論もしていない。十分に議論を尽くして ほしい」と迫った。しかし、米倉会長は「ご意見をいただきましたが、この場で議論をするつもりはありません」と一蹴。食い下がる孫社長の発言を何度も遮りながら、「いたずらに原子力は今の段階でダメであるということは言ってはならないことだ。もっともっと我々の技術で、世界の原子力の安全 性の確保に貢献するような形で、これからも努力していきたいと考えている」と、持論である原発推進論を唱えた。