(ゆいっこ花巻;増子義久)
「内陸の冬は初体験。キムチを食べて寒さを乗り越えよう」―。初雪が舞った21日、花巻市内の自治会館に沿岸被災者約50人が集まり、キムチ作りに挑戦した。「ゆいっこ花巻」が企画した冬本番のワークショップ。別のグループはクリスマスに備えたリース作りに取り組み、故郷を遠く離れたお互いの消息を確かめ合った。
キムチ作りを指導したのは韓国・ソウルから被災地支援に駆けつけた尹丁九(ユン・ジョン・グ)さん=44歳=。10月初めから宮城県石巻市や福島県南相馬市などで瓦礫撤去やお墓の清掃などのボランティアを続けてきた。「今日は本場のキムチ作りを伝授します。とっても辛いよ」と尹さん。
大根や長ネギ、ニンニク、ショウガ…。手分けして刻んだ具に真っ赤な唐辛子を練り合わせると、即席キムチの出来上がり。「寒さの冬を吹き飛ばせ!元気いっぱい―復興キムチ」―。大槌町から転入した小笠原京子さん(75)が「こんな名前でキムチを売り出したら…。私たち被災者も元気を発信しなければ」と呼び掛けると、みんな笑顔でうなずき合った。
別の部屋では同じ大槌町出身の佐々木敏郎さん(81)が女性群に交じって、リース作りに挑戦した。「被災前は釣りや盆栽、陶芸、日曜大工など時間が足りないほど多趣味だった。それが今では一日中、テレビの前にごろ寝。ボケも始まったみたいで、それで無理やり引っ張り出したの」と妻のタカ子さん(75)。
本格的な冬を前に引きこもりやアルコール依存症が増えている―と専門家は指摘している。自殺や孤独死、犯罪…。「酒びたりにパチンコ三昧。すってんてんになった先のことを考えると末恐ろしい」と話す被災者も多い。「2か月ほど前、私の知り合いの奥さんもせっかく助かった命を絶ってしまった」とタカ子さんは声をひそめた。仮設移住後、大槌町内では分かっているだけで3人の自殺者を出している。
「ゆいっこ花巻」が企画するワークショップへの参加者は回を重ねるごとに増えている。「みんなが顔を合わせ、互いに悩みや愚痴を話し合うことが一番、気持ちを開放させる」と被災者は口をそろえる。これから先の長い冬を乗り切るため、今後も多岐にわたるワークショップの開催を計画していくことにしている。
ゆいっこ
ゆいっこネットワークは民間有志による復興支援団体です。被災地の方を受け入れる内陸部の後方支援グループとして、救援物資提供やボランティア団体のコーディネート、内陸避難者の方のフォロー、被災地でのボランティア活動、復興会議の支援など、行政を補完する役割を担っております。
ゆいっこは、「花巻」「盛岡」「北上」「横浜」「大槌」の各拠点が独立した団体として運営しておりますが、各拠点の連携はネットワークとして活用しております。
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