「楽天以外の反対はない」(渡辺恒雄・巨人会長)とみられていたDeNA(ディー・エヌ・エー)社のプロ野球参入問題で、ちょっとした「異変」が起きた。
賛成だった「巨人」が「態度保留」に転じ、オーナー会議での参入承認(4分の3以上)への影響が注目されるとの報道も出てきたのだ。DeNAが訴訟を起こされたことや巨人の「お家騒動」の影響では、との指摘もある。
白石・巨人新オーナー会見の真意とは
「賛成派・巨人が一転の態度保留」と伝えたのは、11月24日付のスポーツニッポンだ。
23日にあった巨人の白石興二郎・新オーナーの就任会見で、「参入問題」について白石氏が「状況を分析して…」と述べるに留まり、「軌道修正ともとれる姿勢を打ち出した」という。
巨人では、ナベツネこと渡辺会長が「大賛成だよ」「(反対する球団は)楽天以外にないよ」(11月9日)と述べるなど、賛成派のはずだった。前オーナーの桃井恒和・球団社長もナベツネ氏と歩調を合わせる姿勢を示していた。
スポニチ記事では、「巨人が方針転換となれば状況一変」とし、12月1日に予定されているオーナー会議での参入承認問題への影響を指摘した。
もっとも、日刊スポーツやサンケイスポーツなどは、同じ白石氏会見を取り上げる記事で「巨人の方針転換」について触れておらず、スポニチが深読みをしている形にもみえる。
「楽天の主張は広がらず」の見方も
白石会見前日の22日にあったプロ野球の臨時実行委員会では、楽天が参入反対の理由説明をしている。
モバイルゲームの分野で競合する「グリー」などが11月21日に発表した、DeNAに対する10億5000万円の損害賠償訴訟などについて、楽天は問題視する認識を示した模様だ。この訴訟問題も、最近になっての新しい動きだ。
オーナー会議に向け、楽天の反対論は浸透するのか。「プロ野球 球団フロントの戦い」(草思社)などの著書があるスポーツ・ジャーナリストの工藤健策氏に聞いてみた。
工藤氏は、参入反対論は広がらず、承認されるとみている。基本的には参入歓迎の球団が多く、22日の臨時実行委以降も、「参入承認へ」の流れを変えるほどの動きは見てとれないという。
DeNAの訴訟問題についても「影響なし」とみる。「お家騒動」中の巨人でも、「名誉毀損」などをめぐる訴訟合戦に発展する可能性もあり、どの球団も「他球団のことをとやかく言える義理ではない」というわけだ。
また工藤氏は、スポーツマスコミなどが、参入問題でもナベツネ氏の発言を「さも大きな影響力があるかのように、いろいろ忖度して報じる」姿勢に苦言を呈した。
「本当に巨人が影響力を持っていた時代はとうに終わっている。スポーツマンシップとは無縁のナベツネ氏発言をいつまでも持ち上げるのは止めるべきだ」
11月25日には、巨人から球団代表職などを解任された清武英利氏が「反撃会見」を行う予定だ。「ナベツネ氏の影響力」に関わる証言が飛び出すかどうかは未知数だ。