ソフトバンクの孫正義社長の発言が物議をかもしている。NTTドコモのインターネット接続サービス「iモード」に関して、「インターネットじゃない」などと手厳しく批評したのだ。
しかも最初は決算発表の場で、さらに経済誌のインタビューでと、2度繰り返した。元NTTドコモ執行役員で、iモードの開発に携わった夏野剛氏はツイッターで孫社長に向け、「iモードに対する誤解は理解できない」と反撃した。
「10年前、どっかの国ではiモードなるものが」
孫社長は「日経ビジネス」誌の2011年11月21日発売号でロングインタビューに応じ、同誌電子版では誌面の内容よりも厚い「拡大版」が掲載された。
この中で、ソフトバンクが英ボーダフォンから国内携帯電話事業を買収する前の2005年、孫社長が米アップル創業者のスティーブ・ジョブズ氏を訪ねたエピソードがある。携帯業界に新規参入するなら、音声通話中心のサービスではなく、「人がまだ見たこともないような画期的な武器が欲しい」と孫社長は考え、今日のスマートフォンのような端末をつくるビジョンを、ジョブズ氏に持ちかけたのだという。
記者が当時の状況について、「携帯電話は日本が一番進んでいると言われていた」と話すと、孫社長は同意しながらも「OSも載っていない手作りのボタンだらけ。しかも画面が小さい」と振り返り、こう続けた。
「いわゆるiモードというのはインターネットじゃないんですよ」
例えばウェブサイトを閲覧する場合、iモードではパソコンやスマートフォンで見られる「フルバージョン」とは異なる「簡易版」の携帯サイトがメーンだ。孫社長によれば、これは「特殊な画面サイズの特殊なアプリ」で、インターネットとは別物だと言いたかったようだ。
実は10月27日に行われたソフトバンクの2011年第2四半期決算説明会でも、同様の発言をしている。こちらは「生声」だけに、よりストレートだ。「ソフトバンクは、ネット揺籃期からインターネットカンパニーだった」と語る孫社長。わずか10年で携帯電話の性能や通信速度は格段に向上しているが、何年も前から「スマートフォンの時代が来ると予測していた」と主張する。そのうえで、
「10年前、どっかの国ではiモードなるものが花盛りだった」
と、皮肉めいた言い回しを皮切りに「iモードが、インターネットができるものだと勘違いしている」「iモードのどこがインターネットだ」とバッサリ。今日のスマートフォンこそ本物のインターネットマシンであり、iモードを認めないような表現に終始した。