動物の適正な扱い方などを定めた「動物愛護管理法」が来年、改正される見通しだ。生後一定期間に達しない犬や猫の販売を禁止する内容などが盛り込まれる方向で調整が進んでいる。
ペットブームが広がる中、環境省が募集したパブリックコメント(意見公募)には12万件を超える異例の数の意見が寄せられた。
ネット販売や夜間販売の規制強化
同法は1973年に施行された。動物を不適切な環境で販売する業者が増えたことがきっかけで、2005年6月の改正では、業者が届け出制から登録制に変わった。ほぼ5年ごとに見直すことになっており、同省は来年の通常国会での改正を目指している。
今回の改正では、ペットのインターネット販売や夜間販売の規制強化などさまざまな課題が浮上している。注目されるポイントの一つが犬や猫について、生後一定期間は販売してはいけないという規制を設けることだ。現行では、販売禁止期間について明確な基準はないが、「生まれて一定期間たたない犬や猫を親や兄弟から引き離すと、社会化できず、しつけがしにくくなって、将来、ほえたり、かんだりなどの問題行動を起こす」と言われる。実際、海外では「8週齢未満」の犬や猫の販売を禁止しているケースが少なくない。
しかし、販売禁止期間については賛否両論があるのが実情だ。海外の例にならい、「8週齢未満は販売禁止」を求める声は多い。犬や猫に将来、精神的な問題が生じることへの懸念だけでなく、「販売されるために移動させる段階で、幼い犬や猫は死んでしまうケースがある」といい、健康面で配慮すべきという理由からだ。
業界などは「45日間」を主張
これに対し、「8週齢未満は禁止という根拠は薄い」との声も根強い。「8週齢未満禁止の根拠は、大型犬などを対象にした欧米の研究などが基になっており、小型犬が圧倒的に多い日本では事情が違う」とも言われる。幼い犬や猫は人気が高いため、販売期間に厳しい規制がかかれば、ペット業界への影響は大きく、業界などは「45日間」を主張している。
一方、「基準を設けていない現行のままでよい」との声もある。同省は販売禁止期間を設ける方針を固めてはいるが、期間設定については未定で、今後も検討が重ねられる見通しだ。
また、ネット販売については、ペット業者と飼い主に対し、ネットだけの取引を禁止して、現物の確認や対面での説明を義務づける方向だ。一度も対面せずにペットを販売した場合、感染症などの病気にかかっていることに気づかないなど、さまざまな問題が生じる可能性があるためだ。
空前のペットのブームの現代、ペットを飼う家庭は増え、ペットを単なる愛玩物ではなく、家族と同じ存在だと感じる人も増えている。法改正の行方には関心が高まっている。