長谷川洋三の産業ウォッチ
ホンダ社長のイライラ:過去の成功体験を背負い過ぎた

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「東日本大震災に続いてタイの大洪水。お祓いでもしたい心境だ」

   こう嘆くのはホンダ(本田技研工業)の伊東孝紳社長。2011年11月17日、東京都内のホテルで開いた第32回本田賞授与式の後のレセプションで最近のホンダについて尋ねた私に答えた。

   一連の自然災害で部品不足や工場被災などで長期の減産が続き、2012年3月期決算では減収減益は必至。2011年1-9月の世界新車販売台数ランキングでもトヨタ自動車とともに販売台数を減らした。

新興国にはそれなりの市場ニーズがある

   自然災害の影響を受けているのは他の自動車メーカーも同じだが、伊東社長ががまんならないのは海外進出の先駆けとして米国で成功しながら中国やインドなどの新興国でこのところ成果をあげていないことだ。

「過去の成功体験を背負い過ぎた。米国で成功したやり方を新興国でも踏襲しようとしていたのではないかと反省している。新興国にはそれなりの市場ニーズがある。新たな戦略を打つ必要がある」

   世界中の人々の生活に貢献する優れた業績をあげた科学技術者を顕彰しようと1980年にホンダ財団が設立した本田賞は毎年本田宗一郎氏の誕生日に贈賞するのが慣例。今年は、従来経験値に頼っていた触媒化学に、基礎科学の手法を取り入れるなどの功績をあげた米カリフォルニア大学バークレー校のガボール・ソモルジャイ教授が表彰された。

   博士の功績は電池や燃料電池の電極表面化学反応にも応用できるというが、当の教授は「テクノロジーとサイエンスは別の存在。テクノロジーのスピードは速いが時々さぼる。それに刺激を与えるのがサイエンスだ」とやや距離を置いた発言だった。

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