国内ソーシャルゲーム大手2社が、法廷で争うことになる。グリーはKDDIと共同で、「Mobage」を運営するDeNAに対して、10億5000万円以上の損害賠償を求める訴訟を、東京地方裁判所に起こしたと発表した。
DeNAが、プロ野球「横浜ベイスターズ」を買収して球界進出を果たそうとしている時期だけに、このタイミングでの提訴は「グリーによる妨害か」との憶測まで出ている。
「違法行為と認定されてもなお、やり続ける」
「(DeNAから)損害を受けた会社の中には、報復行為を恐れて提訴できないところもある。我々としては毅然とした態度を示して、このようなことが是正されるように求めていく」
グリーの田中良和社長は、2011年11月21日に都内で開かれた記者会見で、こう語気を強めた。会見で配布された訴状によると、DeNAは2010年7月下旬~8月上旬、「モバゲータウン」(現在の「Mobage」)に人気ソーシャルゲームを提供する特定の事業者の代表者を呼び出し、グリーにソーシャルゲームを提供した場合は「DeNAとの取引ができなくなる」「モバゲーのウェブサイトにゲームの紹介が掲載されなくなる」と伝え、グリーの事業を妨害する行為を働いたという。これについて公正取引委員会は2010年12月8日、DeNAに立ち入り検査を実施し、11年6月9日には排除措置命令を出した。
命令は8月に確定し、その後グリーが「DeNAによる違法行為への対応を検討した結果」今回の提訴になったという。グリーを含め被害を受けた複数の業者のうち、手数料の問題が生じていたというKDDIとの2社が原告となった。損害賠償請求額は10億5000万円以上で、損害の算定によって増額される可能性があるようだ。
田中社長は、DeNAが圧力をかけた業者について「ゲーム会社だけでなく、当社にサーバーを提供している会社や広告代理店など、多くの企業から『DeNAから(取引をやめると)言われたが、どうすればよいでしょうか』と問い合わせを受けた」と明かす。さらに「これが一番大きい」と前置きしたうえで、DeNAが排除措置命令を受けたにもかかわらず、いまだに業者に対する圧力行為を続けているとの認識を示した。「違法行為と認定されてもなお、やり続ける。DeNAとはそういう会社なのかと感じている」と指摘した。
「我々は一方的に違法行為を受けている被害者」
会見で田中社長は繰り返し、DeNAによる「違法行為」に対して、「ゲームソフトメーカーから相談を受けた」と説明した。ただし具体的な事例や社名については、「業者側がDeNAからの報復を恐れている」ことを理由に、明らかにされなかった。
DeNAは11月4日、横浜ベイスターズを買収して球界参入を決定し、日本プロ野球組織に加盟を申請した。12月1日に開かれる12球団のオーナー会議で認められれば、「横浜DeNAベイスターズ」が誕生する。今回のグリーの提訴時期は、DeNAに対する公取委の排除措置命令が確定してから約3か月経過しており、わざとDeNAの球界加盟申請時期に合わせて「邪魔」したのではないか、との見方も出た。これについて田中社長は、「この時期に提訴の準備が整った、ということに過ぎない」と憶測を一蹴。記者から「コンプライアンス上問題がある、と指摘したDeNAが球団を持つ資格があると思うか」との質問が飛ぶと、「球界参入については我々がコメントする立場にない」としつつも、「違法行為をしても競争相手に勝てばいいという考え方が公に認められたんだ、ということになるのを懸念している」と話した。
グリーとDeNAは、今や国内のソーシャルゲーム業界で「2強」の存在だ。法的措置に出る前に、両社が歩み寄ることはできなかったのか。DeNAからは、排除措置命令が出たのちに書面で、「違法と認定された行為はやめると取締役会で決議した」旨の通知が送られてきたが、謝罪などはなかったという。田中社長は、やや強い口調で、
「我々は一方的に違法行為を受けている被害者であり、措置を講ずるべきは加害者側の問題ではないか」
と主張。グリーからDeNAに問題解決を呼び掛けるのは筋違いとの考えを示した。
今回のグリーの提訴についてDeNA広報は、「訴状を見ていないのでコメントできません」と答えた。