「記者はもう少し対応の仕方があった」と説明
人命最優先の行動に対し、千葉日報は、なぜ男性記者を厳重注意にしたのか。
大沢克之助編集局長は、取材に対し、こう説明する。
「人道的な緊急措置でやむを得ないとは認識していますが、記者倫理からみて、腕章を渡した行為は慎重さに欠けていたということです。まず、腕章は、報道目的に使うのが主ですから、目的外使用になります。そうすると、腕章への信頼性が失われる危惧があります。さらには、ジャーナリズムの中立性が損なわれる可能性も否定できません。もちろん、報告や連絡、相談という社会人、職業人としての倫理からどうかということもあります」
もし記者から相談を受けていたとしたら腕章を貸したかについては、大沢編集局長はこう言う。
「非常に難しい判断ですね。仮定の問いには、答えにくいです。一般論としては、人命がかかっていてやむを得ないとして、腕章を貸すこともあると思います。今回についてもなかなか言えませんが、記者については、もう少し対応の仕方があったということです」
人道的行為であることは認識しており、記者への厳重注意は、決して処分ではなく、指導の一環だという。読者からは、数十件の意見が寄せられており、記者の行動への賛意がほとんどだとしている。
県警の依頼を断った記者の報道機関は明らかにされていないが、各社では、この問題についてどう考えているのか。
回答を寄せた毎日新聞、産経新聞、NHK、TBS、フジテレビは、いずれも依頼はなかったとし、「慎重に判断しなければならない問題だと思います」(毎日)、「それぞれの立場により、いろいろな考え方があると思います」(産経)、「取材に関することは基本的にお答えを差し控えています」(NHK)などとした。朝日新聞、テレビ朝日は、依頼の有無は明らかにせず、取材の経過についてはお答えしていないと回答した。