日本のお正月には欠かせない年賀状だが、2012年の新年は「明けましておめでとうございます」といった表現は控えた方がいいのではないか――。そんな議論がネットで起こっている。
2011年3月11日に起きた東日本大震災の傷は癒えず、原発事故被害も続いているからで、被災地に出す年賀状はもちろん、そうでない地域に出す場合でも、「おめでとう」はちょっとまずいのでは、というのだ。
日の丸のイラストに「ガンバロウ!日本」を添える
フェデックス キンコーズ・ジャパンは2012年用の年賀状で104のデザインを提案している。そのうち4種類は従来にはなかったデザインを考案した。「おめでとうございます」という言葉は使わず、日の丸のイラストに、
「ガンバロウ!日本」「明るい日本になりますように」
という言葉を添えた。また、干支の辰のイラストではなく達磨を描いて
「なんどでもおきあがるよ!!」
というのもある。同社の担当者は、本格的な受注が始まるのはこれからだが、
「震災の後ですので年賀状に悩むお客様もいました。それだけに好評価を受けていまして、需要は伸びていくと思われます」
と説明する。
「挨拶状ドットコム」を運営するにっこう社は、宮城県仙台市の今野印刷と組み、11年10月に「元気だ状プロジェクト」を立ち上げた。被災地の人々が、自分たちが元気に頑張っていることを、世話になった人、家族・友人に発信しようというのもので、専用ハガキが制作された。そのデザインが来年の年賀状にピッタリだ、と評判となり、被災地以外でも買い求める人が急増しているのだという。ハガキには「絆」「感謝」「元気」「一期一会」「前進」といった筆文字が大きく書かれている。
「被災者支援用ハガキであり、年賀状を意識したものではありませんでしたが、確かに、新年から送った方も送られた方も元気になれる、そんなハガキだと思います」
と同社広報は説明する。
日経調査で「おめでたい言葉は控える」が19.3%
それでは実際に、「おめでとう」の文字を控えた年賀状を出す予定の人はどれくらいいるのだろうか。日本経済新聞電子版は「来年の年賀状の挨拶文、どうしますか」というアンケートを11年11月16日に実施した。それによると11年11月17日午後5時現在で 「おめでたい言葉は控える」が19.3%、「従来通りの挨拶文」が71.4%、「わからない」が9.3%となっている。このアンケートのコメント欄には、
「家族を失った被災者の心情を考えれば、来年の年賀状はできるだけ控えるべきだ」
「被災地や家族・知人が被災したなど明らかならば控えるべき」
「おめでたいを控えるのは、日本人らしい、遠慮・心遣いのあらわれで良いことだと思う」
といったものや、
「自粛ばかりでは気持ちも沈んでしまう。来年こそ良い年となるように従来通りにする」
「生きて新たな年を迎えるということは、それだけでおめでたいことだとより強く思った今年一年。だから、しっかりと、おめでとうと書きます」
などと書き込まれている。