05年にはサポーターの暴徒化で無観客試合に
日本側からすれば、傍若無人とも言える北朝鮮側の立ち振る舞いだが、過去の事例を見る限りでは、実際にFIFAの制裁措置が発動されるまでには、かなりハードルがある。
例えば、FIFAの規律委員会では05年4月29日、6月8日に平壌で予定されていたドイツW杯アジア最終予選の日本対北朝鮮戦を第三国に移した上で、しかも観客を入れずに行うという制裁措置を決めている。北朝鮮からすれば、(1)入場料収入を失う(2)地元観客の声援を失う(3)遠征費用がかかる、という「三重苦」だが、この原因となったのが、05年3月30日に平壌で行われた北朝鮮対イラン戦だ。ホームゲームで北朝鮮が3連敗を喫したこともあって、試合後に北朝鮮サポーターが暴徒化し、審判やイラン代表に瓶を投げつけるなどした。
だが、朝鮮中央通信などの国営メディアは、暴動について
「観客らはシリアの主審と副審たちの誤審に怒り、強力な抗議を表明した」
と正当化。北朝鮮サッカー協会も4月1日、審判の判定が暴動を招いたとするコメントを発表した。国際試合の開催国には、審判団や選手を保護する義務があるが、これが十分に果たされなかったとFIFAは判断したようだ。
それ以外の無観客試合の例としては、05年の予選でコスタリカやアルバニアに対して下された処分などが知られている。コスタリカは、観客が判定を不服として審判にコインを投げつけ、アルバニアは観客が発煙筒を手にピッチになだれ込むなどした。
逆に言えば、この程度まで事態が悪化しないと、試合の開催は認められる、ということのようだ。