「すべて」を交渉テーブルに載せるのか
不明な部分もあるが日米の言い分を推し量ると、次のようになるだろうか。
――日本側。野田首相は「すべての品目とサービス分野を貿易自由化の交渉テーブルにのせる」と、会談の場で明言したわけではない。だから「(首相は)言っていない」。
米側。それに基付いて進めると野田首相が言った基本方針には、「すべての品目を自由化交渉対象とする」と明記している。ということは、そう言ったに等しい。よって「米の発表は正確だ」。――
これでは野田首相は、米側には「すべて交渉対象」をにおわし、逆に国内的には「例外品目への配慮」を強調する「2枚舌だ」との批判を受けても不思議ではなさそうだ。
こうしたあいまいな態度を見抜いた米側が、意図的に「例外品目」に焦点を合わせた「首相発言」を発表し、「踏み絵」を突きつけてきたという見方もできそうだ。
TPPをめぐる野田首相の態度に対しては、「2枚舌」批判がすでに高まりつつあった。TPP協議入りが「参加に向けて」のものかどうかを巡ってだ。自民党の石原伸晃幹事長が13日の自民会合で「2枚舌」を指摘したほか、14日の自民党外交部会でも声が上がっていた。
今回の「日米の言い分食い違い」を受け、今後「2枚舌」批判が一層高まれば、TPP問題で野田首相が窮地に追い込まれる展開も予想される。