オリンパス株が上場廃止になるかどうかめぐって投資家の思惑が渦巻き、東京株式市場でオリンパス株が乱高下している。2011年11月11日まで10営業日連続で値を下げた後、週明けの14日には一転して制限値幅の上限(ストップ高)である前日比80円高の540円で取引を終了。「マネーゲームの度合いが一層強まっている」(国内証券大手)との声が聞かれた。
東京証券取引所は11月10日、上場廃止の恐れがあることを投資家に周知するため、オリンパス株を「監理銘柄」に指定した。「損失隠し」などについての第三者委員会の調査結果を踏まえて2011年9月中間連結決算の関連書類を法定期限である11月14日までに財務局に提出することは、時間的にできないとオリンパスが発表したことを受けた措置だ。
「重大な影響がある虚偽記載」に該当するかどうか
猶予期限である12月14日までに提出できないと上場廃止になることを投資家に知らせるための監理銘柄行きだ。オリンパスは第三者委員会による損失隠しなどの調査が12月初旬にはまとまるため、12月14日の期限は守れる、としている。上場廃止になっても株が消滅するわけではなく、議決権行使や配当受け取りなどもできるが、取引相手を見つけて売却するのは難しくなる。
しかし、提出期限がクリアできても上場廃止基準の一つである、「重大な影響がある虚偽記載が行われた場合」に該当する可能性は残る。東証は、売上高で10%以上、利益で30%以上といった訂正の場合、重要な問題と判断すれば、自主規制法人上場管理部が上場廃止にあたるかどうかを審査する。
審査に入ると監理銘柄に指定される運びとなる。虚偽記載で上場廃止になる例は多くはないが、有名どころでは西武鉄道(2004年)やカネボウ(2005年)、ライブドア(2006年)などがある。ただ、旧日興コーディアルグループ(2007年)のように審査の結果、上場維持と判断されるケースも珍しくない。
東証は、上場廃止できるだけ回避したい姿勢?
自主規制法人の判断に数値的な基準は設けられておらず、「重大な影響があるかどうか」を、関係者へのヒアリングなども踏まえて総合的に判断する。東証関係者は「会社全体として組織ぐるみなのか」「赤字なのに黒字と書いたのか」などの悪質性が問われることになると指摘する。
ここへきて「それほど悪質ではなく上場維持の方向ではないか」との見方が出てきたことが、オリンパスの株価に影響している。つまり、旧経営陣の個人による企業買収の不正疑惑と、会社による有価証券報告書への虚偽記載とを分けて整理し、証券取引等監視委員会は虚偽記載について課徴金などの行政処分にとどめる模様、との観測報道が週末から相次いだのだ。
もともと、「東証は、上場廃止はできるだけ回避したい姿勢」と見られている。旧経営陣の個人的な問題ということになれば、悪質度は高くないと判断し上場維持となるかもしれない、との思惑から週明けはストップ高となった。ただ、上場廃止か維持かの結論が出るのは12月以降。経営の先行き不安から上がり続ける材料にも乏しく、当面は短期筋のマネーゲーム銘柄になる可能性が高まっている。