プロ野球巨人を揺るがした「清武の乱」は今後、賛同者が出ずあっさり収束するのか、それとも燎原の火のごとく広がるのか。ナベツネこと渡辺恒雄・球団会長が読売グループに君臨する「帝国」の行く末に注目が集まっている。
これまでのところ、「反乱会見」を開いた清武英利・球団代表兼GMの孤独な闘いにみえる。しかし、「読売の若い人たちは拍手喝采」との声もある。さらに、「独裁者追放」が続く「中東の春」が、今回の巨人騒動に影響する可能性を指摘する経済人もいる。
清武「反乱」は「いずれ広がっていく」?
清武氏が会見した2011年11月11日、清武氏と「同じ被害者」の文脈で名前が出た桃井恒和・オーナー兼社長は、「(清武氏を)かばうことはできない」とつきはなした。原辰徳監督も11日、「残念だ」と距離を置いた。
一方、「読売グループの若い人たちはよく言ってくれたと拍手喝采」との内情を明かしたのは、スポーツニッポンの宮内正英・編集担当役員だ。11月14日の情報番組「みのもんたの朝ズバッ!」(TBS系)の中で述べた。
もっとも、宮内氏によると、他球団の関係者は「みな清武さんに批判的」だという。渡辺氏の反論を報じた13日付スポーツ紙各紙をみても、全般的には「渡辺氏に理解を示す」傾向が強いといってよさそうだ。
このまま「清武氏のやり過ぎ」であっさり終わってしまうのか。
清武氏は周囲への「根回し」をしていない模様なので、「反乱」がすぐに続くかどうかは分からないが、「いずれ広がっていく」との見立てを披露するのは、マーケティングが専門のコア・コンセプト研究所代表、大西宏氏だ。自身のブログでも巨人問題を取り上げている。
大西氏は、渡辺氏の「独裁」に対する不満は、巨人だけでなく、渡辺氏が会長・主筆を務める「親会社」の読売新聞グループを含め相当なレベルに達しているのでは、と推測する。
「独裁への異議」醸成され易いタイミング
時折涙を見せて会見した清武氏について、「報復などを含め、(渡辺氏の)独裁に対する恐怖心から出た涙だろう」として、「逆に、それだけの覚悟をして、『それでも言わなくては』というところまで追い込まれていたことになる」。
清武氏の今回の行動が「前例」となったことの意味は小さくない。渡辺氏の「独裁」などに疑問や不満を感じている社員らが、「上げるべき声を上げる」という行動を起こす敷居が低くなったからだ。
ここまで「独裁」問題が表沙汰にされた今、従来のような「締め付け人事」は難しくなった可能性がある。だとすれば「反乱」がやり易くなるかもしれず、逆に「締め付け」を強行すれば、従来以上の反発が出ることにもなりそうだ。
また、チュニジアやエジプト、リビアなどで起きた、民主化を求めて独裁政権を倒した「中東の春」も大西氏は連想する。こうした「革命」は、爆発した不満が、独裁への恐怖を上回った結果でもある。こうした流れを受け、
「言うべきことを言えない組織、独裁におびえる組織だとすれば、それに異議を唱えなくていいのか」
という空気が、いつになく醸成されやすいタイミングになっていると大西氏はみる。
また、渡辺氏が「清武会見」を事前に察知し、「つぶす」ことができなかった、という現実を前に、渡辺氏の影響力について「衰え」を感じた他球団関係者も多いはずだとも指摘した。
勿論、ネット上などでは「ナベツネ体制はまだまだ安泰」との見方も根強くある。