「ハーグ条約」加盟の動き急 専門家も「条件付賛成」に傾く

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   国際結婚が破綻した夫婦間の子供(16歳未満)の扱いについて、国際協力のルールを定めた「国際的な子の奪取の民事面に関する条約」(通称「ハーグ条約」)加盟への動きが加速してきた。

   政府は5月に閣議了解し、7月から法制審議会(法相の諮問機関)で関連国内法整備の議論を進めている。だが、慎重論も根強く、特に家庭内暴力(DV)から逃れて帰国したケースへの対応などが焦点になりそうだ。

帰国後ハワイに行ったら「誘拐犯」

   ハーグ条約は1983年に発効し、現在は欧米を中心に85カ国が加盟している。例えば米国人男性と日本人女性の結婚が破綻して女性が子を日本に連れて帰った場合、男性が返還を求めれば、原則として子を元の国、つまり米国に戻す、というものだ。その上で、その国(この場合は米国)の裁判所で、この養育について決めることになる。

   国際結婚が破綻した場合、一方の親が子を連れて帰国し、他方の親と争いになることも少なくない。外務省によると、日本人(元)配偶者が無断で日本に子どもを連れ帰ったとして外国政府から日本政府に申し入れがある件数は5月時点で約200件。100件が米国で、他は英国、カナダ、フランスなど。条約未加盟のため、米国から子を連れ帰った日本人の元妻が、ハワイに入国したところで誘拐犯として逮捕される事件も起きている。

   条約に加盟した場合の実際の手続きは、日本に子を連れ帰った場合、外務省が海外からの申し立てを受け付け、子の所在を確認し、当事者に話し合いを促す。話し合いで解決しない場合、外国の親は自国に戻すよう日本の裁判所に申し立てができる。日本の親が、海外に連れ帰られた子についても、逆に日本に戻すようもとめることができるようになる。

家庭内暴力の扱いが焦点

   問題は、どのような場合に返還を拒めるかだ。条約は「元の国に戻す」のを原則としつつ、「子が身体的、精神的な害を受ける重大な危険がある場合」や、連れ帰ってから1年以上経過して子が新しい生活になじんでいると判断される場合などは、返還を拒否できると定めている。例えば米国人の(元)夫のDVが疑われるような場合は返還を拒否できるということだ。ただ、拒否できるケースの要件をどう規定するかは簡単ではない。また、実際にDVに耐えかねてようやく逃げ帰った女性が、外国でのDVを証明するのは容易ではない。

   ハーグ条約への日本の加盟は欧米から強く求められていて、日米間でも、普天間基地、TPP、米国産牛肉輸入問題とならぶ「四つの宿題」(山口荘副外務相)の一つとまで位置づけられている。専門家の間でも、返還を拒否できる条件を厳格にして加盟すべきだとする「条件付賛成」の声が多いとされるが、「子の利益第一」を大原則に、どのような法案の条文に仕上げるか、関係者は注視している。

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