山岡賢次・消費者担当相がマルチ商法(連鎖販売取引)関連の集会で行った講演映像が波紋を呼んでいる。講演で山岡氏は「ネットワーク・ビジネス」(マルチ商法)を「称賛」している。どんな話をしたのだろうか。
2011年11月10日、衆院予算委員会の理事懇談会で、議員らが山岡氏講演(約17分)のDVDを視聴した。自民党の石破茂・前政調会長は、見た感想について「(山岡氏は)消費者を守る消費者相にふさわしくない」と述べた。更迭を求める声も出ている。
「革命家になって、日本をつくり変えて頂きたい」
DVD視聴は、山岡氏がマルチ商法業界から献金を受けていた問題に関連して実施された。山岡氏は翌11日の会見で、DVDの講演内容について、「宣伝ではなく、出席者を個人的に激励した」と説明した。
DVDは、2008年6月に千葉県内であったマルチ商法関連の集会の様子を撮影したもの。まだ民主党への政権交代前のことだ。
関係者によると、出席者に配られるなどしたDVDをコピーしたもののようだ。山岡氏講演前後の様子も映っている。マルチ業者の「会員有志」が主催した集会という。
「私たちに確信を与えてくれる」ゲストとして紹介された山岡氏は、手を振りながらスーツ姿で登場。山岡氏のゆかりの人物がマルチ業界と縁があると話し、「拉致をされて(ここへ)来た」と話した。
さらに、マイクを握って演壇を離れ、壇上を右に左にと移動しながら、手振りを加えて熱弁をふるった。
戦国武将の織田信長らを例に挙げ、「誤った常識を破壊した」人たちだと指摘。「みなさんに革命家になって頂き、日本をつくり変えて頂きたい」とエールを送った。
「誤った常識」とは、日本でのネットワーク・ビジネスに関する「大変不幸」な「誤解」を指すようだ。「似て非なるネズミ(講)が入ってきて、(ネットワーク・ビジネスが)勘違いされた」と擁護した。
国民生活センター「トラブル、あとを絶たず」
山岡氏は、日本が従来型の「団体戦」を続けていては、「このままでは日本は滅んじゃう」としつつ、ネットワーク・ビジネスは、「団体戦でなく個人のパワー」を生かすものだと持ち上げた。
「みなさんに日本を作り替えて頂きたい」
さらに「健全な」ネットワーク・ビジネスは、「国のためになる仕事」だとして、バックアップを約束している。
実は、インターネットの動画投稿サイトには、2008年に投稿された、山岡氏による「マルチ商法称賛」講演動画が紹介されている。今回のDVDとは別の集会で、08年より古い映像の可能性が高い。
この動画では、山岡氏について司会者が、「ネットワーク・ビジネスの健全な発展」のため、「各地で熱の入った」講演を行い、「(聞き取り困難)仲間から絶大な信頼」を得ている、と紹介している。
山岡氏は、DVD講演とほぼ同様の話を展開し、「本当の意味で国民に期待されるビジネスに育てていって頂きたい」として、「全力で政治の面からもバックアップをしましょう」と宣言している。
山岡氏はかつて、マルチ商法関連の議員連盟会長を務めていたこともある。
マルチ商法自体は違法ではない。マルチ商法を問題視する声に対し、業界内では、「業界すべてが悪いとの印象をマスコミが与えている」と反発する声がある。
一方、独立行政法人「国民生活センター」のサイトによると、「マルチ商法、マルチレベルマーケティングなどと呼ばれる取引でトラブルにあう事例はあとを絶ちません」(2010年7月)と注意を呼びかけている。
同センターが11年11月1日に公表した「マルチ取引」の相談件数は、09年1万5789件、10年1万1614件、11年は9月末までに3853件。相談内容は「解約・返金に関するものが多い」そうだ。