調達力ないメーカーには厳しくなる
調査会社BCNは11月10日、デジタル家電の年末商戦の見通しを発表した。その中でHDDの現状について、10月下旬には店舗販売価格が1日で3000円アップした例があるように「既に品薄、価格上昇が起きている」という。これを踏まえて、年末商戦では販売台数ベースで前年比40~55%減になる恐れがあると説明した。これはBCNが、販売店のヒアリングや過去の販売の推移などを勘案して試算したものだ。
これに対してPCは、現状ではメーカー各社の在庫があり、12月に入ってから影響が出てくるとの見方だ。ただし、米アップルの「iPad」のようにHDDとは別の記憶媒体を搭載するタブレット型端末が普及しつつあることから、減少幅は前年比1割程度にとどまるとの見通しを示した。
BCNエグゼクティブアナリストの道越一郎氏はJ-CASTニュースの取材に対して、「メーカーからは『仕入れ値が倍になった』との話も聞きました。しかし値上がり分をそのまま消費者に転嫁するわけにもいかず、今は我慢するしかないでしょう」と話す。
道越氏によると各メーカーは、タイでのHDDの生産が完全復旧するまで「半年は覚悟している」という。タイから別の国に一時的に生産拠点を移す方法も考えられるが、短期間で製造ラインを新たに整備し、従業員を確保するのは簡単ではない。今は「耐える時」と心を決めて、タイ以外の生産地からかき集めるのが結局は「近道」のようだが、道越氏は「調達力がないメーカーにとっては厳しくなるかもしれません」と指摘する。
光明も差してきた。日本電産は11月4日、HDD用モーター部品を製造するアユタヤ工場の操業を再開。TDKも、タイ中部のワンノイ工場での生産を11月7日に一部で始めた。ここではHDD用サスペンションを製造している。各メーカーの工場復旧がどれだけ早く進むかがカギだ。