タイを襲った洪水で、ハードディスク駆動装置(HDD)の生産が大きな打撃を受けている。部品メーカーの現地工場が被災し、復旧まで時間がかかりそうなのだ。
国内のHDD価格は値上がり始めており、品薄も心配されている。年末商戦の販売台数が前年比5割減になるとの試算も出た。
入荷状況不安定だが、すぐなくなるわけではない
タイは世界のHDD生産の6割を占める。今回の洪水で2011年10月中旬以降、HDDの部品を製造する国内メーカーの現地工場が浸水のため、一時操業停止に追い込まれた。HDD最大手の米ウエスタン・デジタル社も同様の被害で生産をストップ。世界的な供給不足が懸念される。
国内のHDDの価格は、既に影響が出ている。パソコン(PC)周辺機器メーカーのバッファローは11月2日、HDD部材の供給不足と価格の上昇を理由に製品価格を見直し、値上げすることを発表した。モデルによって値上がり幅は違うが、例えば外付けHDDで2テラバイト(テラは1兆)・1万6800円だった製品が、11月下旬には2万4200円に上がる。バッファロー広報に取材すると、タイ以外の生産地から部品を調達できており、今すぐHDD製品が市場から消えさるわけではないと説明する。ただし、「モノはあるが高い」のが現状で、今は在庫切れを起こさないことを最優先にやりくりしているようだ。
11月10日、東京・秋葉原の電器店を数軒訪ねてみた。大手量販店のHDD販売コーナーをのぞくと、棚には外付けや持ち運び可能な小型の商品が所狭しと並んでいて、品薄感はない。しかし、PCパーツを多くそろえる別の店に行くと、少々様子が違った。売り場には「HDDの入荷状況が不安定になっています」との張り紙があり、購入数を制限していた。店員に聞くと、急を要するなら今後のさらなる値上がりを見越して今のうちに買うのがよいのでは、と勧めたが、続けて、「逆に急がないのなら、しばらく待つのも手かもしれません」という。タイの洪水が落ち着いて生産が再開すれば、HDDの値段も元に戻る可能性が高いとの「読み」だ。