TPPで議論百出だ。私はTPP交渉参加に賛成だが、その第一の理由は自由貿易のメリットだ。もちろん自由貿易にはデメリットもあるが、メリットがそれを上回る。これは理論的にも歴史的にも示されている。もしこれが否定されるならノーベル賞ものだ。
TPPによるいろいろな影響を包括的かつ計量的に網羅した応用一般均衡モデルもいろいろあるが、国際機関でも使われているGTAP(Global Trade Analysis Project)により構築されたものでも、メリットのほうが大きい。これはデメリットにもなんらかの対応策があることを意味している。
混合診療との関係は?
第二の理由は国際交渉上のものだ。TPPには今のところ中国が参加していない。中国は今のところ自由貿易協定への参加は消極的だ。いまのうちに日本が参加しておけば、将来中国が自由貿易協定へ参加したり、あらたな枠組みを提示したりした場合、早めにTPPに参加した日本はルール作りに加わっているので対中国との関係で有利になる。
いずれにしても、今の国内議論をみていると、TPP慎重派(なぜか反対派とはあまりいわない。タイミングを見ての参加ということか)は、規制緩和反対派や民営化反対派とかなりダブって見えてしまう。
TPPについて議論していくと、医療の混合診療がどうなるか、郵政民営化がどうなるか、などという個別問題の是非にいきあたる。
政府が、TPPで混合診療も議論の対象になるといったら、TPP慎重派から猛烈な反発を食らっている。要するに、現在の日本で原則禁止になっている混合診療について、TPPがきっかけになって解禁されていることをTPP慎重派はおそれているのだ。歯科や産科では事実上混合診療になっているのをTPP慎重派はどうみているのか。
ならば、今の政府は混合診療について禁止か解禁なのか。このところがはっきりしていない。解禁というスタンスなら、早速法改正への準備が必要だ(今のままでは先の最高裁判決をみれば分かるように、解禁できない)。混合診療については小泉政権時代にも検討していたが、今の政権は議論すら避けている。それがTPP問題の混乱に拍車をかけている。