(ゆいっこ花巻;増子義久)
「みんな元気だったかい」「早く故郷で一緒に暮らしたいねぇ」―東日本大震災で被災し、一時、花巻市内の温泉施設「大沢温泉・自炊部」に避難していた人たちが約4か月ぶりに苦楽を共にした自炊部で再会。「大沢・大槌人会」を作って今後も支え合って行くことを誓い合った。
震災後の5月下旬、花巻市内に身を寄せた被災者は千人を超え、うち38世帯95人の大槌町出身者が同自炊部に避難。長い人では4か月近くも辛い避難生活を余儀なくされた。仮設住宅が完成した8月中旬には全員が退去したが、現在、全体で309世帯613人の被災者がそのまま花巻市内の雇用促進住宅や民間借り上げ住宅、知人宅などに転居し、うち半数近くの128世帯276人を大槌町出身者が占めている。
5日、1泊2日の予定で自炊部を訪れたのは8世帯13人で、大追町内の仮設住宅に移った人は6世帯10人。花巻市内の民間借り上げ住宅で暮らす鈴木みよさん(58)は夫と次女、母親、兄嫁の4人を津波で失い、役場に勤めていた次女(当時28歳)はまだ行方不明もままだ。スナックを経営するしゃきしゃきママさんだった鈴木さん。「故郷に帰りたい気持ちは大きいけれど、身内を奪ったあのゴ~ッという波の音が耳にこびりついていて…」。
被災―現地での避難所生活―内陸部への一時避難―仮設住宅や民間借り上げ住宅などへの転居……。「まるで流浪の民みたいな生活だったね。でも自炊部での共同生活は何ものにも代えられない連帯感みたいなものも生み出した。これを大切にしたいと思って」と越田ケイさん(74)。当時67歳だった夫と経営していた理容店を津波で失った越田さんは先月18日、念願の理容店の再建にこぎつけた。「一息ついたと安心した途端、あの自炊部生活が急に懐かしくなって…。それで大槌人会の結成を思いついたの」と越田さん。
顔なじみの温泉従業員が次々に差し入れをしてくれる中、13人は近況報告やこれからの生活再建などを話し合った。「仮設でプライバシ-が守られると思っていたが、隣家の鼻いびきまで聞こえてくる」「仮設の住人同士もほとんど知らない人ばかり」…と日々の生活にストレスを募らせる訴えも。「浜の人間にはカラオケが欠かせない」と元漁師の一声で近くのホテルに繰り出し、日頃のうっぷんを歌で払った一同、今後「大沢・大槌人会」の結束を強めていくことを確認し合った。
ゆいっこ
ゆいっこネットワークは民間有志による復興支援団体です。被災地の方を受け入れる内陸部の後方支援グループとして、救援物資提供やボランティア団体のコーディネート、内陸避難者の方のフォロー、被災地でのボランティア活動、復興会議の支援など、行政を補完する役割を担っております。
ゆいっこは、「花巻」「盛岡」「北上」「横浜」「大槌」の各拠点が独立した団体として運営しておりますが、各拠点の連携はネットワークとして活用しております。
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