粉飾決算の疑いで上場廃止の恐れがある光学機器メーカーのオリンパスの株主が激怒している。大株主の米投資ファンドは現取締役と監査役の総入れ替えを望んでいるほか、広報IR室長も「退任だ!」と息巻いている。
なにしろ、今回の「損失隠し」が発覚したきっかけとなったマイケル・ウッドフォード元社長が解任された前日の2011年10月13日から、株価は75%超も下落。時価総額で、じつに5000億円超を失ったのだから、株主の「怒り」は当然だろう。
時価総額、わずか1か月で5000億円超の損失
オリンパスの企業価値の低下は目も当てられない。同社株は11月9日も売りが殺到し、連日のストップ安を記録。終値で535円にまで落ち込んだ。前日に、英医療機器メーカーのジャイラスなどの買収で、ファイナンシャル・アドバイザーに支払われた高額の手数料が「財テク」の失敗による「損失隠し」に使われてことを発表。記者会見で、高山修一社長は「上場維持に全力を挙げる」としたが、投資家の多くがいまだに不信感をもっているようだ。
こうした事態に、筆頭株主の日本生命は「コーポレート・ガバナンスに対する不信感を払拭し、すべてのステークスホルダーに対して説明責任を果たしていくなどの対応を要望したい」と話す。
また、大株主の米投資ファンド、サウスイースタン・アセット・マネジメントはオリンパスに対して、臨時株主総会の開催と、取締役と監査役の早期交代を要求するとのコメントを発表。「損失隠し」に関与したとされる菊川剛前会長兼社長と森久志副社長、山田秀雄常勤監査役に加えて、それ以外の取締役全員と監査役、さらには広報IR室長の南部昭浩氏を早急に交代させるべきと要望する、厳しい内容を突きつけた。
米投資ファンドは広報室長を重要視している
株主が広報室長の早期退任にまで言及することは異例だ。国際金融アナリストの枝川二郎氏は、「米国で広報というとPRや宣伝に近いが、日本の広報は企画部門などと同じ経営の中枢に位置し、多くの情報が集まってくる。対外的に発信する情報も、広報の権限や裁量で選別できる。それもあって(米投資ファンドは)広報室長を重くみているのでしょう」と話している。
米投資ファンドは10月31日に、問題が指摘されている英医療機器メーカー、ジャイラスなどの買収を決定した取締役会議事録の公開を求めていた。オリンパスの広報IR室に、公開の有無を聞いたところ、「要望があったことを含め、個別の案件については申し上げることはできません」と答えた。
また、「第三者委員会の調査で真相を究明すべく最善を尽くしており、調査結果についてはすみやかに開示していきます」と述べ、「これが現在のわたしどもの姿勢です」と繰り返した。
米投資ファンドが満足のいく回答を得られず、広報IR室長が「役割を果たしていない」と判断したのかもしれない。
J-CASTニュースは、名指しで退任を迫られたオリンパスの南部昭浩広報IR室長にコメントを求めたが、「コメントできません」の一点張りだった。