野田佳彦首相は「庶民派アピール」を止めたのだろうか。首相就任直後の散髪では、財務相時代からの行きつけだった1回「10分1000円」のヘア・カット店を利用したが、今回は「4515円」の老舗理容室で髪を切ったのだ。
2011年11月7日夜、野田首相が散髪に訪れたのは、東京・新宿区の銀座マツナガ新宿店だった。4515円のコースを利用した。銀座マツナガは1968年創業の老舗だ。「1000円店」からの今回の変化は、「たまたま」なのか、それとも何か「事情」があったのか。
「会合の帰りに寄れる店を利用しただけ」
野田首相の次の散髪の場所は?
野田氏の首相就任後まもなく、例えば朝日新聞は、「どじょう首相、庶民の味 酒とだじゃれと1000円散髪」(9月3日付朝刊)と、1000円散髪と庶民派を強く結びつけて報じた。
店は、国会も近い「QBハウス虎ノ門店」で、テレビのワイドショーでも注目された。ちなみに「10分1000円」の枕言葉は、「20分なら2000円になる」という意味ではなく、「概ね10分で終わり1000円」ということだ。
9月3日には、首相就任後初めて同店を訪れ散髪した。「庶民派」路線を継続する姿勢を示した、とも受け止められていた。野田首相は、所用時間が約10分と「速い」ことが特に気に入っていたようだ。
ところが今回は、行きつけ店ではなく「4515円」店。ちなみに、新宿周辺のほかの理容室数店のサイトを見てみると、「4200円」や「4500円」といった表記が並ぶ。「4515円」は、新宿周辺では特に高いわけではなさそうだ。
今回の首相が使う理容室の変化について、各新聞社はどう見るのか。
例えば毎日新聞は、今週に環太平洋パートナーシップ協定(TPP)問題の意見集約など重要案件が目白押しだとして、「普段より『お高い』散髪で、自身に気合いを入れる意味もあったようだ」と分析した。
日本経済新聞は、首相周辺の話として「会合の帰りに寄れる店を利用しただけ」との説明を伝えている。
一方、産経新聞は、「1000円カット店」と利害が対立する全国理容生活衛生同業組合連合会(全理連)から「『デフレ脱却』という首相の政治テーマに反する」などと抗議の声が上がっていた、と紹介した。