八重山地区採択問題は混迷が続く
育鵬社では、シェア拡大の背景について、
「06年12月に教育基本法が全面改正され、伝統文化を重視する方針が掲げられた。これに対応する形で教育指導要領も変わり、伝統文化や人物学習の重視が盛り込まれた。育鵬社では、これに基づいた教科書作りを行ってきた」
と、教科書の内容が現場のニーズにマッチしたことが一因とみている。
なお、この文科省の発表には、沖縄県の八重山地区(石垣市、竹富町、与那国町)で使用される教科書の数は含まれていない。同一地区では同じ教科書を採択することが定められているが、地区内の自治体間で採択を主張する教科書が異なり、溝が埋まらない状態が続いているためだ。石垣市と竹富町は育鵬社の中学公民教科書の採択を求める一方、竹富町は東京書籍版の採択を主張。中川正春文科相は、竹富町を無償措置の対象外とし、町の予算で購入して配布するように求めている。
一連の動きをめぐっては、
「法律を破って不当に決められた教科書を有償で容認するのは、金を出せばルール無視が許されるかのような危険な判断である」(11月1日、産経新聞「主張」)
「法整備の怠慢を棚に上げ、その矛盾の責任を竹富町教委に負わせる文科省のやり方はやはりおかしい」(11月6日、沖縄タイムス社説)
と、育鵬社教科書の賛成派・反対派の両方から激しい異論が出ており、混迷は続きそうだ。