4年ぶり、保育所「待機児童」が減った 定員増や集計方法の見直しによる

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   認可保育所に入れない待機児童数が、4年ぶりに減少に転じた。厚生労働省の全国の集計結果(4月1日現在)は、前年同期より719人少ない2万5556人だった。

   ただ、水準は依然として高く、不況で共働きの人も増える。子育て環境が順調に好転する保証はない。

横浜市は保育所の新設などで定員増やす

   共働きの増加を背景に、保育所に通う児童数はこの十数年間増え続けており、今年は前年より約4万3000人多い約212万3000人。待機児童数も昨年まで3年連続で増え、今の仕組みで調査を始めた2001年以降で最多の2003年に迫る勢いだった。今年は減少に転じたとはいえ、過去3番目と依然として水準は高い。待機児童の82.6%が3歳未満。また、81.9%が首都圏や近畿圏、政令指定市などの都市部に集中する。

   昨年まで2年連続で全国一だった横浜市は前年比581人減の971人と劇的に減らした。2010年度、約80億円の予算を投じて、認可保育所を23カ所新設。既存の施設でも受け入れを増やし、約3300人分の定員を上積み。駅近くのビルには、3歳未満の低年齢児を預かる認可保育所を2カ所整備。ここを「送迎保育ステーション」として3歳以上は、立地が悪く定員に余裕がある別の保育所にバスで送迎する仕組みも整え、親は駅近くのステーションまで送迎すればいい仕組みも整えたことなどが奏功した。

   ただ、待機数減には集計方法の見直しも"貢献"している。横浜市では育児休業中の人が「入所できなければ、育休を延長できそうだ」と答えた場合などを「入所待ち」から外し、見かけ上の待機児童数を277人分圧縮したという。昨年の2位から225人減らして4位になった川崎市も、定員を増やしたほかに、一時保育利用者約70人を待機数から除いている。

   逆に待機数(1275人)、増加数(677人)ともにワーストになったのが名古屋市だが、決してサボっていたわけではない。保育所新設などで576人分の定員を増やしたが、追いつかなかった。不況で共働き世帯が増えており、「保育所が増えると、預けるのを諦めていた人が新たに申し込むケースもある」(関係者)という。

12年度から保育面積の基準引き下げも

   全国で待機児童が減ったのは、定員の増加による部分が大きいと見られる。近年の定員の増加ペースは1万~2万5000人程度だったが、2010年度は約4万6000人にのぼる。「国の補助が手厚くなった」(厚労省)が、その「安心こども基金」は2012年3月までの暫定措置で、「税と社会保障の一体改革」と消費税率引き上げも絡むだけに、必要な予算を確保できるか、予断を許さない。

   待機児童を巡って、ここにきて関係者の間で議論になっている問題に、保育面積の基準引き下げがある。1歳児1人当たり3.3平方メートルなどの最低基準を、首都圏と大阪、京都、兵庫の35市区に限り、2012年度から3年間の時限措置として緩和するもの。地価が高い、土地が足りないという中での苦肉の策だが、こうした「詰め込み」には保育水準の低下、さらに事故の危険が高まるなど、保護者の不安は大きい。

   都内で待機児童が最も多い世田谷区は、区立小中学校の校庭の一角に保育施設を設けるなどしているが、ニーズに追いつかない。基準緩和で定員を増やせるが、区は今のところ緩和を適用しない方針といい、実際に35自治体のうち緩和に踏み出すところがどれだけあるか、注目される。

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