どのような「民意」がつくられるのか
果たして、野田政権の国家戦略会議はどんな舞台装置となるのか。野田政権は「政治主導」を掲げた鳩山、菅政権の失政を教訓に財務省との接近を図っている。消費税を引き上げ、財政再建を図るべきだと主張する野田首相の政策は、野田氏が財務相時代に財務官僚から刷り込まれたとされる。今回の国家戦略会議の設置、構成メンバーも財務省をはじめとする官僚が、民間や有識者代表の「民意」を利用して、霞が関が求める政策の実現を図ろうとしているのは間違いない。官僚主導が復活するのではないかという懸念がある。
野田政権が小泉政権と違うのは、経済界との距離感と連合の存在だ。財界代表の米倉氏、長谷川氏は環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の早期交渉参加と「社会保障と税の一体改革」に基づく消費税増税を求めている。経団連は「米倉会長になって疎遠だった民主党政権との距離感を国家戦略会議で一気に縮め、消費税や法人税など税制の抜本改革を実現したい」ともくろむ。
しかし、関係者の間では「国家戦略会議は消費税や雇用問題などの基本路線で、経団連と連合が対立するのは明らか」との見方が強い。東京電力の原発事故を受け、「エネルギー政策の再構築」も議論する予定だが、脱原発依存に舵を切った連合と、東電など原発メーカーを抱える経団連の対立も予想され、先行きは不透明だ。