ドーナツチェーンの「ミスタードーナツ」が販売する新シリーズのドーナッツ「焼きド」の売上げが低迷している。ミスドを展開するダスキンによると、第2四半期(2011年4~9月)の売上げ目標、61億円に対して約半分の30億円弱にとどまっている。
「焼きド」は2011年5月に発売。オーブンで焼き上げた、「新食感」のドーナツとして注目されたが、東日本大震災の影響で消費が冷え込んだうえ、価格設定を誤ったことが不振の原因のようだ。
大きさ小さめ、高めの価格設定が不振の原因か
「焼きド」は、油で揚げずに、オーブンで焼くのがセールスポイント。素材をそのまま使えるので、野菜を生地に練りこんだ「ベジ焼きド」や、フルーツフレーバーと果肉を使った「フレーバー焼きド」など、これまでにないドーナツとして売り出した。半分がビスケット、半分がドーナツという、軽い食感が特徴だ。
市場調査の富士経済は、「ミスドの『焼きド』は新たなカテゴリーとして注目しているのですが、今のところはまだそのようになっていないようですね」と話す。
同社がまとめた「スイーツ市場」動向によると、市場全体の販売額は2010年に1124億円(焼き菓子等を含む)で、前年に比べて1.7%増えた。
スイーツ市場、なかでもドーナツ市場は2004年に「DOUGHNUT PLANT」、08年に「クリスピー・クリーム・ドーナツ」と海外勢が相次ぎ新規参入。また、最近はヘルシーさを売りモノとする「はらドーナッツ」や「フロレスタ」などの新興チェーンが店舗数を拡大しており、「市場全体は活性化している」(富士経済)と話す。
そうしたなかでミスドは、2010年は夏場の猛暑の影響を大きく受けて実績を減らした。油で揚げたドーナツは夏場に売上げが落ちるのが悩みで、この5月に投入した「焼きド」はその対策でもあったが、従来のドーナツと比べてふんわり感が失われた分、「大きさが小さく感じられたことや、販売価格が10~20円程度高めに設定したことが、敬遠されたようで、今後は商品の改良や値下げなどを検討していく」(ダスキンの山村輝治社長)という。
「テイクアウト市場」で苦戦するミスド
ミスドを展開するダスキンに、「海外勢や新興のドーナツチェーンが勢いづいていることが売り上げ減少の原因ではないか」と聞くと、店舗数(ミスドは全国約1350か店を展開)や「キッチンがある店舗で、手づくり感のあるドーナツをすぐに提供できる」といった優位性から、「追われているという意識はありません。むしろ多くの人がドーナツに注目してくれるようになって市場が活気づいてうれしい」と、余裕をみせる。
ただ、市場の売上げ動向ではミスドのようなイート・イン市場(販売額194億円、シェア14.7%)よりも、テイクアウト市場(同930億円、70.4%)のほうが売れている。
海外勢や新興チェーンはテイクアウトに力を入れていて、「(ミスドの売れ行きが落ちているのは)その差が出ているのかもしれない」(富士経済)と指摘する。
また、「最近のトレンドとして、新興のドーナツチェーンのように、食品添加物無添加やからだにやさしい素材を厳選した安全や健康志向の商品が拡大している」こともある。