退職を申し出ると、会社から「損害賠償請求するぞ」と脅され、退職したら本当に約2000万円の賠償請求訴訟を起こされた会社員がいたことが2011年5月、話題になった。
その後、会社はこの社員から反訴され、残業代未払いで逆に1100万円余の損害賠償を命じる判決を言い渡されていたことが分かった。
過労死レベルの労働だったと反訴
元社員男性(34)の代理人をしている塩見卓也弁護士のツイッターによると、京都市内のシステム開発会社は、賠償請求の理由について、「従業員モチベーション低下数値」という数字を挙げていた。
真意は不明だが、男性が辞めて会社に残った社員のモチベーションが下がったということらしい。
これに対し、男性は、過労死レベルの労働だったにもかかわらず、残業代などが支給されていなかったとして、会社に未払い分など約1600万円の支払いを求め、京都地裁に反訴していた。男性は2001~09年まで会社のSEをしていたが、一定時間を「働いた時間」とみなし、残業代が支払われない裁量労働制を不当に適用されていたというのだ。
そして、報道などによると、京都地裁の大島真一裁判官は11年10月31日、会社の請求はすべて棄却。会社側は仕事の進め方を男性に委ねる一方で、1日の労働時間を8時間ととみなし、残業代を支給しなかったとし、会社に未払い分1136万円を男性に支払うよう命じる判決を言い渡した。
「退職の自由」の侵害は認められず
大島裁判官は、男性の仕事には、裁量労働制対象外の営業・プログラミング業務や本人の裁量でないノルマなどがあったと指摘した。男性が手元に持っていた日報などから、07年から時間外手当の未払いが568万円あったと認定。さらに、休日・深夜手当も同額あったとして、付加金の支払いも認めた。
ただ、塩見弁護士はこの日のツイッターで、退職の自由の侵害であるとの主張や、会社の請求自体が濫訴で不法行為だとの主張は退けられたことを明らかにした。
会社側は、請求がすべて棄却されたことなどをどう考えるのか。
京都市内のシステム開発会社では、取材に対し、担当者が出張中で連絡もつかないとし、回答は得られなかった。