「予想どおり、してやったり!」――。2011年10月31日に政府・日銀が7兆円規模ともいわれる円売り・ドル買いの為替介入に踏み切ったことで、外国為替証拠金(FX)取引に投資していた「ミセス・ワタナベ」と呼ばれる個人投資家は、大いに儲かった。
円が連日のように過去最高値を更新するなか、個人投資家は「逆張り」(あえて相場の流れに逆行する取引)で、「為替介入」のタイミングを待っていたわけだ。
円売り介入「あるとわかっていた」
円高が進行するのは「円買い・ドル売り」が進むためだが、個人投資家はこの動きに逆らって、「円売り・ドル買い」の動きに出ていた。ドルが上昇した後に、その持ち高を解消して利益を得るのが狙いで、この作戦がまんまとはまった。
これまで個人投資家のFX取引は、日米の金利差を利用して金利差分の収入を得る「円売り・ドル買い」の投資が圧倒的に多かった。反対に円を買ってドルを売ると、金利差分を支払わなければならない。そのため、超低金利通貨の円は「売り」の対象になりやすかったが、日米の金利差が縮まったことでその「旨み」が薄れていた。
個人投資家の「円売り」行動には、円高を抑える働きがあるが、為替介入前はそれでもなおも円が上昇。10月下旬には1ドル75円台の高値水準で推移した。
ある個人投資家は、「今回は為替介入があることがわかっていた」という。それも、おそらく輸出企業の為替取引が活発化する月末であろうことも予測がついていた。
外為どっとコム総合研究所の植野大作社長は今回の為替介入について、「短期的には絶大な効果がありました」と話す。介入直前の10時25分に75円63銭を付けていたドル円相場は15時には79円53銭と、わずか5時間のうちに3円91銭、5%超も上昇した。
「かなりの輸出企業が助かったはずですし、利食いした個人投資家も多かった。ドルだけでなく、他の通貨に対しても円が急落したので、FX投資ではわずかな元手で、また数時間で数十万円、数百万円と儲けた投資家は少なくないでしょう」とみている。海外市場のようすから、「もし介入がなかったら、74円台に突入していたと思います」と話す。
金利差ある通貨ほど、円買い傾向
11月2日のドル円相場は、78円08~13銭近辺で推移。今後の相場が気になるが、早くも為替介入の効果を疑問視する向きもある。
外為どっとコム総研の植野社長は「安住財務相は『納得いくまで介入する』と市場の動きをけん制するが、1回で納得したのか、断続的に介入するのか、日本が円高阻止にどの程度本気なのか、市場に試されている」と話す。
過去3回の為替介入が「尻すぼみ」だっただけに、前出の個人投資家は「これまでの様子から、何度も介入することはないでしょう」とみていて、「今後は75円を割っても、しばらくはない」と読む。
FXのマネースクウェア・ジャパンの相葉斉社長は、「為替介入があると踏んで、まだ『逆張り』で攻める個人投資家はいますが、介入後は金利差のある通貨ほど円を買う傾向にあります」と話す。
現在の円高は、一定程度落ち着くとみている個人投資家は少なくないようだ。