国内で拡大を続けるスマートフォン市場では、米アップルの「アイフォーン(iPhone)」や韓国サムスン電子の「ギャラクシー(GALAXY)」といったグローバルモデルが人気を集めている。
一方で日本メーカーの中にも、国内市場にとどまらず海外進出して自ら「グローバルモデル化」を視野に入れるところも出てきた。NECカシオは、「メディアス(MEDIAS)」のブランドを強化して、北米をはじめ世界市場で勝負に出る。
「スマートフォンの海外市場の障壁は低い」
NECカシオは2011年10月31日、新商品発表会を開いた。その席で田村義晴社長は、2011、12年度の海外展開の「ロードマップ」を公表。特に北米向けは、米大手通信会社ベライゾン向けの事業を基盤として市場拡大を目指すことを明らかにした。現地体制を強化し、営業活動を活発化していくという。発表会の会場には、MEDIASのグローバル仕様端末の試作品が並べられた。国内で発売されていない、カラフルな色合いの機種も見られた。
アップルやサムスン電子など海外のメーカーと比べ国内メーカーは「後発組」だが、NECカシオは早くから海外市場での事業を念頭に置いていた。田村社長も2011年5月の就任以降、メディアの取材で頻繁に「海外進出」を口にしてきた。
海外事業の成功のカギを握るのは「ブランド力」だと、田村社長は強調する。だが現状では、MEDIASを国内市場に投入してから7か月と期間が短いうえ、NECカシオ自体の市場参入が遅かったこともあり「(MEDIASの)認知度はまだまだ」と認める。
そこで、今回の新商品ラインナップが、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルの国内大手携帯電話会社3社すべてに採用されたことを契機に、更なるブランド力アップを図る。新商品は、次世代高速通信「LTE」に対応する先進モデルや、大容量バッテリーと高精細ディスプレー搭載の端末、また女性をターゲットにした軽量でデザインに凝った端末と、使用目的に合わせて複数のモデルを投入する。
海外でMEDIASの名を広めていくうえで、日本とは違った方法が必要になるのではないか。これについて田村社長は「スマートフォンは、むしろ市場が違っても障壁は低い」と見る。グローバルモデルが国内でも支持を得ているように、MEDIASの特色は国内、海外関係なく「いいものはいい」と受け入れられるはず、との理由だ。
「世界最薄」で差別化図る
他社製品との差別化を図るため、MEDIASでは「世界最薄」というコンセプトを打ち出している。2011年3月に「薄さ7.7ミリ」を掲げて初代MEDIASを発表。以後も「薄さ」を軸にした新規モデルを開発している。
田村義晴社長は「これまでは『薄いのに全部入り』という点を価値として提示してきました」と話す。MEDIASに対する消費者の声やインターネット上での反応をみると、「こんなに薄いのに、さまざまな機能が搭載されているのか」という驚きがあったという。
「しかし今後は、他社も薄型化の取り組みを進めるでしょう。そこで『薄さオンリー』ではなく、薄さを追求してきたからこそできる技術を生かしていきたい」
具体的には、本体が薄いから、多少大きなサイズの電池を積んでも厚みが増して持ちにくくならない、といったメリットがあると考える。 海外市場で「世界最薄」を実現したその技術力が評価され、MEDIASブランドが定着すれば十分勝算はあるというのだ。