「年内に冷温停止」が工程表改訂版に明記されたばかりだが、ここにきて福島第1原発の2号機について「水素濃度が上昇した」と、東京電力が発表した。
東電は「爆発を心配するレベルではない」と説明しているが、インターネット上では、今回の「異変」について、ちょっとした不安を書き込む人も出ている。
「空気の流れの変化」が影響か
東電は2011年10月30日、2号機の原子炉格納容器から吸い出したガス(気体)の水素濃度が、30日17時時点で2.7%に上昇したと発表。28日18時現在は約1%と安定していた。水素濃度は、爆発の危険をおさえるため、4%を上回らないよう調整されている。
2号機では6月末から、水素濃度が上がらないよう格納容器へ窒素を注入している。水素濃度上昇が確認された10月29日夕からは、注入する窒素の量を増やした。31日10時現在の水素濃度は2.7%で、30日夕とくらべ横ばいとなっている。
窒素注入は1、3号機でも以前から実施されている。
当初より発生量は減っているが、今も水が分解され水素や酸素の発生は続いているとみられている。不燃性である窒素を注入することで、水素や酸素を格納容器から追い出している形だ。
ここにきて水素濃度があがった理由は何なのか。水素の発生量が上昇するような原子炉内の異変が起きている可能性はないのだろうか。
ネット上では、東電による「爆発を心配するレベルではない」との説明に対し、「本当かね?」「水素発生量が増えた可能性も考えろ」といった不信、不安の声も一部寄せられている。
東電は31日現在、「詳しい原因は調査中」としながらも、「今回の数値上昇は想定の範囲内」と説明した。窒素の注入量の調整により、水素濃度を減らしていくことが可能、ともみているようだ。
水素濃度が上昇する前の28日夕から、上昇がみられた29日にかけては、実は、2号機の「格納容器ガス管理システム」の本格運用が、28日夕に始まっている。
濃度4%上回っても「ただちに爆発するわけではない」
この新システム稼働による格納容器内の「空気の流れの変化」が、今回の水素濃度上昇に関係していると、東電ではみているようだ。
同システムは、格納容器から配管へ出るガス(水素など)について、処理装置を通すことで「放射性物質を99%除去」した上で屋外に放出する。
稼働前は、窒素注入により格納容器から水素などを「押し出していた」が、稼働後は、新設配管の方へ「機械的に吸い出す」ことになった。このため、「空気の流れが変わった」ようだ。
では、なぜ「流れ」が変わると水素濃度に変化が出るのか。ちなみに、濃度を測定している地点は、格納容器内ではなく、容器から出た気体を通す配管の途中のポイントだ。
格納容器内の構造は複雑なため、内部の水素濃度は均一ではない。このため、東電では、新システムの稼働に伴う空気の流れの変化により、濃度数値がある程度変化する可能性を「想定」していた、というわけだ。
さらに、水素濃度が4%を超えたとしても、「ただちに爆発するわけではない」。「一定濃度以上の酸素」などの条件が重なる必要があるが、「圧力は一定し、外部から酸素が入ってくる要因もなく、火元もない」として、「爆発を心配するレベルではない」と繰り返した。
水素の発生量自体が増えているのでは、との疑問点については、少なくとも、そうした変化をうかがわせる「原子炉内の温度などの数値の変化」はみられないと説明した。もっとも、あくまで「詳しい原因は調査中」だそうだ。