俳優と歌手の杉良太郎さん(67)が新聞の連載コラムにつづった思わせぶりな一言が憶測を呼んでいる。
「大阪市長選出馬を示唆した」のでは、というのだ。所属事務所は完全否定しているが、過去の選挙では自民党候補の応援演説に駆けるなど、政治とのつながりは比較的深いこともあり、ありえないことではないと受け止める向きもある。
「大阪を『めちゃくちゃ』にしようとしている人が現れた」
波紋が広がっているのは、2011年10月29日の東京新聞夕刊に掲載された杉さんの連載コラム「紙つぶて」。この日は「私の市長選」と題して、
「私は二度、市長選に出馬しようと考えたことがある」
と、過去にホノルル市長と大阪市長に立候補しようとしたことを明かしている。コラムによると、1988年、「ホノルル市名誉市長」の肩書きを持っていた杉さんに対して、ホノルルの税関職員が名誉市長のIDカードを指に挟んで捨てたことに激怒。
「あの職員の態度は日本人に対しての差別とも感じたし、私以外にもこんな扱いをしていると思われる」
として出馬を表明したという。市長が出馬を見送るように懇願したが受け入れず、米国務省から詫び状が届いて、やっと矛を収めた。
2度目は大阪市長選。西尾正也市長(1987年~1995年在任)に対して杉さんが「この次は私が出る」と伝えたところ、西尾氏は杉さんのパーティーで「市長選に出るのだけはやめてほしい」とあいさつしたという。出馬の動機は不明だが、「西尾さんは格別良い人だった」と振り返っている。憶測を呼んでいるのが、その直後のフレーズ。
「今、大阪を『めちゃくちゃ』にしようとしている人が現れた。私の心はグラグラしている」
というもので、「大阪を『めちゃくちゃ』にしようとしている人」は、大阪都構想を押し進める橋下徹府知事を指すとみられ、「私の心はグラグラしている=出馬に向けて心が揺れている」と受け止められているようなのだ。
「出馬はまったくない」と所属事務所
杉さんの所属事務所は、
「出馬はまったくない」
と、この憶測を完全否定しているが、杉さんと政治の距離は意外に近い。
2008年の衆院選では網走まで出向いて自民党の武部勤元幹事長を応援。11年4月の夕張市長選でも、現地入りして自民党前衆院議員の飯島夕雁候補=落選=を応援している。
また、これまでに出馬が取りざたされた回数は、一度や二度ではない。例えば95年夏の参院選では、自民党が兵庫選挙区からの擁立を模索したが、当時のスポーツ新聞によると、杉さんは
「26歳から10回ほど出馬要請を受けたが、ないです」
と否定。
「政治家の手の回らないところを民間外交とかでやっていきたい」
と、民間外交の重要性を強調している。
杉さんと言えば、2011年10月にベトナムのハノイで開催された「日越友好音楽祭」の開催を呼びかけたことでも有名だ。「日ベトナム特別大使」の肩書きも持っている。