光学機器メーカーのオリンパスの企業買収をめぐる疑惑に、日本の金融当局の動きが鈍い。元社長のマイケル・ウッドフォード氏が突然解任された2011年10月14日の前日と比べて、同社の株価は半値にまで急激に落ち込んでおり、なお予断を許さない。経営は混乱したままだ。
ウッドフォード氏が同社に関する調査資料を提出したとされる英米の捜査当局がすでに調査に乗り出しているというのに、金融庁は「状況を注視していることころ」という。いったい、何をやっているのか。
悪質性が高ければ刑事告発も
オリンパス問題について、金融庁・証券取引等監視委員会は「調査に入ったかどうかを含め、個別案件についてはお答えしかねます」とコメント。ただ、一般論として「有価証券報告書などの虚偽記載の疑いがあれば、調査、立ち入り検査をしていくのが監視委の仕事です」と話した。
また、J-CASTニュースが「調査するタイミングが遅いのでは」と指摘すると、「コメントする立場にない」と述べ、こう説明した。
ウッドフォード元社長が証券監視委にオリンパスの調査資料を提供しているが、「基本的に調査に入るかどうかの判断は、内部告発や手紙などの場合があります。依頼があって調査することはありません。情報はメディアを含め幅広く集めていて、それらを精査しています」という。すでに調査は進められているようだ。
英米のメディアは、調査が進んでいることを報じている。英米の捜査当局の動きが早いことに、ある証券関係者は、「証拠隠滅などの恐れがあるので表面化しないだけで、日本も水面下で調べているところなのではないか」と、擁護する向きもある。
今後調査が進んで、証券監視委によってオリンパスのM&Aに関する会計処理が適切でないことがわかれば、有価証券報告書への「虚偽記載」となり、金融商品取引法違反で課徴金処分などの対象になる。さらに、虚偽記載が組織的で悪質性が高いと判断されれば、証券監視委による刑事告発の対象となる可能性もある。
東証は異例の「要請書」を発表
一方、東京証券取引所ができることはそれほど多くない。市場を運営しているとはいえ、東証に調査権限はなく、たとえばインサイダー取引の場合に、東証が証券監視委に取引状況などを報告。監視委が調査に入ることはあるが、オリンパスのような情報開示などのケースではそういった連携もない。
ただ情報開示基準があり、会社は投資家の投資判断に影響を及ぼすことがあった場合、適時開示することになっていて、結果的にそれに反することがあれば、銘柄を監理ポストに移す制度がある。それでも、オリンパスは情報開示を行っているので、「開示基準違反には当たらないのではないか」(前出の証券関係者)との見方があり、現状ではなにもできないようだ。
東証は10月26日、斉藤惇社長と、東京証券取引所自主規制法人の林正和理事長との連名で「上場会社を巡る最近の諸問題を受けた要請」を公表するなど、「円滑な価格形成と市場秩序の維持のために、できることはすべてやる。危機感をもって十分な対応をしていく」と話している。