「任天堂はゲームオーバー?」。イギリスの有力タブロイド紙「The Daily Mail(デイリー・メール)」が2011年10月28日付けの電子版でこう報じた。
任天堂が11年10月27日に発表した業績予想を受けた記事で、11年4~9月期の連結決算は売上げが前年同期比41%減の2157億円、経常損益が1078億円の赤字、最終損益は702億円の赤字。12年3月期では赤字が純損益200億円となり、連結決算を発表した81年以来初の赤字に転落するという。
新型ゲーム機「期待できない」と株価が大幅下落
任天堂の岩田聡社長は理由として、記者会見で携帯ゲーム機「3DS」「DS」と、ソフト販売の不振を挙げた。「3DS」の通期ハード販売計画の1600万台は譲らなかったものの、「DS」は当初予想の900万台から600万台に下方修正。ソフトも7000万本から5000万本に下げた。また、円高の影響で為替差損が膨らんだことも大きいとした。
英・デイリー・メールは「任天堂はゲームオーバー? 3DSの惨敗で任天堂は初の赤字へ」との見出しを掲げた。8月に1万円値下げした「3DS」だけでなく、「DS」も家庭用ゲーム機「Wii」も有力ソフトが出ないため売れない。新型ゲーム機「WiiU」を発表したが、評判が悪く株価が大幅に下落し、
「岩田社長が自ら給料をカットするという事態にまで発展した」
などと書いている。
任天堂が苦境に立っているのはスマートフォンなどでゲームを楽しむ人が増えたことや、これらのゲームソフトがダウンロードで安く買えるため。例えばアップルのiPhone用の人気ソフトが任天堂の約10分の1の値段になっている、と同紙は説明。スマートフォンユーザーは任天堂のゲーム機を必要としていないのだろう、などとし
「任天堂はビジネスモデルを劇的に変える時が来た」
などとした専門家のコメントを掲載している。
「年末年始発売のソフトに期待して」というが…
スマートフォンや携帯電話を使ったゲーム人口は急増。ソーシャルゲームを提供している「モバゲー」のディー・エヌ・エーや、グリーの成長は著しく、例えばディー・エヌ・エーの11年3月の連結決算は売上げが前年同期比2.3倍の1127億2800万円、本業の利益を表す経常利益が同2.6倍の562億5800万円、会員数は3000万人近くになっている。今後はさらなる「任天堂離れ」が起きる可能性もある。
ただ、ネットでゲームファンの声を拾うと、任天堂用のゲームソフトに有力なタイトルが少なく、また過去のヒット作品の焼き直しがリリースされていることが不振の原因で、
「任天堂がヤバイという感じはあまりないんだが・・・」
「結局はソフト。ソフトががっつり揃いだしたらバカ売れする」
「任天のマリオ、ポケモンや、モンハンの新作とかが出たら、一気にユーザーをさらっていく」
といった具合に任天堂の復活を信じている人が結構多い。
ゲーム業界の関係者に話を聞くと、スマートフォンなどに任天堂のゲームユーザーが流れているのは事実だが、どちらで遊ぶのかは面白いゲームが存在しているかどうかで決まる。また、「DS」ユーザーと、スマートフォンしか持っていないユーザーとは人種が違う、と説明する。「DS」は集中してじっくりと攻略を楽しみたいファンが集まるマシンであるはずなのに、特に「DS3」に関してはユーザーの期待に応えていない、というのだ。
「今の任天堂を見ていると、DSの成功で高収益を上げたことにあぐらをかき、もしくは新たな失敗を恐ているのか、覇気というものが感じられない」
と批判する。
任天堂は世界でトップの高収益企業として知られているが、全てが成功していたわけではなく、「バーチャルボーイ」の失敗や、「ファミコン」「スーパーファミコン」と世界を席巻した後に「ニンテンドー64」や「ゲームキューブ」など、今では全く忘れ去られたマシンを出してソニーの後塵を拝することになった。今はそうした時期にあたり、脱出できるかどうかがポイントだと関係者は話す。
先の記者会見で記者から業績不振について問われると、岩田社長は、
「年末年始にリリースするソフトで(復活を)証明する」
と答えたが、本当にそうなるのか。