増税議論報道と「驚くほど似ている」
これでピンときた。日経とオリンパスは結構いい関係なのだ。オリンパスは元日経役員の来間(くるま)紘氏を6月に社外取締役として受け入れている。直近の有価証券報告書によれば、1968年4月日経新聞入社、2004年3月日経新聞専務、05年3月日経BP副社長、07年6月テレビ愛知社長、11年6月オリンパス社外取締役という経歴だ。
一方、スクープを書いた雑誌発行人もライターも元日経記者だ。そうなると、日経は意地でも書かないのかもしれない。外部者の邪推にすぎないが、現場記者はもちろん実態をよく理解して報道したいだろう。
しかし、日経幹部はオリンパスとの蜜月があって、スクープ記事には消極的だ。その間隙をつかれて、元日経記者がスクープを出し、それで日経幹部はますます萎縮していく、こんな姿が妄想される。
今の日経社長は、財研(財務省の記者クラブ)勤務経験を売りとしている。要するに、いわゆる「ポチ」記者の典型だ。財務省の方針である大増税の環境作りというか、増税賛成の意見ばかりを掲載している。
ただ、現場記者の中には増税に反対する意見も掲載したいと思う人もいる。増税反対意見をいう私のところに来る人もいるが、それが決して紙面に載ることはない。オリンパスの一連の報道ぶりを見ると、増税議論と驚くほど似ている。
オリンパスについては、海外の調査機関も関心を示している。というのは、米国では「海外腐敗行為防止法」や英国では2011年7月1日に施行された「贈収賄禁止法」がある。ともに、域外適用があり日本企業も対象だ。
いくら大手マスコミが身内関係を重要視し、記事にしないようにしても、いずればれる。そしてますます大手マスコミ離れになっていくだろう。
++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2005年から総務大臣補佐官、06年からは内閣参事官(総理補佐官補)も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「財投改革の経済学」(東洋経済新報社)、「さらば財務省!」(講談社)など。