東京電力と政府の統合対策室の会見に出席している内閣府の園田康博政務官が、東京電力福島第1原子力発電所で出た低濃度汚染水を「この場で、皆さんの前で飲水をしても構わない」と明言し、波紋が広がっている。
すでに園田氏が飲む予定の水は採取が終わっており、本当に飲めるかどうか分析中だという。
東電はこの水を「滞留水」と呼んでいる
園田氏が飲むことになったのは、5、6号機にたまっていた低濃度の放射能汚染水を浄化処理したもの。この汚染水は、津波で建屋に流入した海水や雨水がたまったもので、仮設タンクやメガフロートに貯蔵されているが、近く満杯になるとみられる。元々放射性物質をほとんど含んでいないとされ、循環注水冷却に使用されている1~4号機の汚染水とは大きく性質が異なる。
東電では、この水を「滞留水」と呼んでおり、「汚染水」という表現すら使っていない。東電が、この水を10月7日から発電所の敷地内にまき始めたことから、安全性を問う声が10月13日の統合対策室の会見で続出。ある記者からは
「安全性を担保するために、菅直人元厚生大臣はカイワレダイコンを食べ、枝野幸男前官房長官は、いわき産のイチゴやトマトを食べた。東京電力が『飲んでも大丈夫』って言ってるんですから、コップ1杯ぐらい、どうでしょう」という声があがり、園田氏は
「安全性の示し方としてベストだということであれば、そういう風に皆さんが受け止めてくださるのであれば、いつでも取り寄せて、この場で皆さんの前で飲水をしてかまわないと考えている」
と返答。挑発に乗った形だとも言える。記者は、水の「すり替え」などを防ぐために、発電所敷地内への同行取材を求めたが認められず、園田氏は東電本社3階の会見場で飲むことになった。
放射性物質の濃度は落とさない
ただし、10月23日午前の東電の会見では、広報部の栗田隆史課長が
「海水浴場の基準をクリアできるレベル」
と放射線量は低いと強調しながらも、
「(放射)線量は低いが、表(地表)に出ているものなので、大腸菌などの処理が必要」
「飲料用として作っている訳ではないので、私どもとしては飲む予定はない」
と説明。東電側は、現時点では飲む予定はないという。
それでも園田氏が汚染水を飲む決意は固く、10月24日夕方の会見では、水素の一種である「トリチウム」が微量検出されていることを明らかにしながらも、
「(飲料水にするための浄化のプロセスで)今の放射線の濃度を落としたのでは、皆さん方にお約束していることとは少し違うのではないかと思う。今タンクの中に入れているようなので、雑菌は取り除いて、放射性物質の状況だけそのままの成分にしたまま、ここに持ってくるように指示している」
と発言。また、
「その水を皆さんに試料提供という形で、発電所の状況を情報提供しているのと同様に、 その水を希望者には渡して、皆さん方できちっと確認出来る方法はとれないかと考えている」
と、汚染水を報道陣に配布することも検討している。
東電の松本純一原子力・立地本部長代理によると、汚染水はすでに10月22日に採取が完了しており、
「現在、分析機関で、飲める水かどうか確認している」
という。採取現場には東電関係者以外は立ち会っていないが、園田氏は
「インチキはさせませんので、私の責任でしっかり持ってこさせたい」
とも発言。汚染水を飲む際に、採取の様子を収録した動画をノーカットで公開することを約束した。