人工衛星落下物の人的被害「油断は禁物」
賠償額の規模についても、「各国でも適用された前例を聞いたことがない」ため分からないという。また、賠償に際しての具体的な取り決めなどの国内マニュアルもない、とのことだ。
一方、内閣府の「宇宙活動に関する法制検討ワーキング・グループ」は、最新の中間取りまとめ(2009年8月)で、日本が被害国になった場合について、次のように書いている。
賠償金の支払いを加害国から受けたときは、「日本国内の被害者にしかるべく分配」し、分配について適切な調整をすることが求められる。しかし、個別事案ごとに状況が違うので、「あらかじめ立法措置を講じておくことは困難」。
さらに続けて、法令で定めないまでも「分配手続き等の具体化に向けた検討を行い、あらかじめ、その結果を明らかにしておくことが望ましい」とも指摘している。この指摘はまだ実現していない模様だ。
「宇宙法システム」などの著書がある立命館大学の龍澤邦彦教授に話をきくと、人工衛星落下物による人的被害について「油断は禁物だ」と警鐘を鳴らした。
「人工衛星落下物に伴うけが人など人的被害は、過去に報告されていない」と報じられることが多い。しかし、未確認情報ながら、1970年代ごろに米国の人工衛星破片が海上で外国船舶にあたり人的被害も出たが、すみやかに当局が補償を済ませ表沙汰にならなかった、と研究者の間で指摘されている事例などがあるそうだ。
政府は2011年9月30日、内閣府に宇宙政策の司令塔機能などを担当する体制を構築する法案を準備することを閣議決定した。次期通常国会への提出をめざす。補償対応問題も置き去りにされず、「宇宙政策」として議論されるのだろうか。