燃え尽きずに地球に落ちてきた人工衛星の部品にあたって大けがなどをした場合、補償はどうなるのだろうか。海外の人工衛星の場合、個人が外国政府を相手取って裁判をしなければいけないのだろうか、それとも救済措置が整備されているのだろうか。
2011年10月23日、ドイツの人工衛星「ROSAT」が大気圏に突入した。燃え尽きない部品が人に当たる確率は約2000分の1とされていた。9月にも米国の人工衛星で同様の落下例があり、同確率は3200分の1だった。
「打ち上げ国」に対し損害賠償を請求
どちらの例でも、いまのところ人的被害は報告されていない。しかし、「2000分の1」などの確率について、「人に当たる可能性、結構高いな」と若干不安に思った人も一部にいたようだ。
仮に、日本国内に衛星部品が落ちてきて、誰かが大けがをしたり死亡したりした場合、補償は誰が、いくらぐらいするのだろうか。
外務省によると、「宇宙物体により引き起こされる損害についての国際的責任に関する条約」がある。日本も遅れて1983年から参加している。
賠償に関する条文によると、損害を受けた個人や法人が出るなどした被害国は、「打ち上げ国」に対し損害賠償を請求できる。
日本国内で被害者が出たと仮定して、日本政府が相手国政府に損害賠償を請求した場合を考えてみる。賠償が日本政府へ支払われた場合、被害者個人や遺族などへお金はちゃんと回ってくるのだろうか。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)を所管する文部科学省や外務省、内閣府などに「私のこの電話が取材ではなく、仮に衛星部品でけがをした被害者だった場合、補償の相談はどの省庁にすればよいのか」ときいてみた。
いずれの担当者も「実際に被害が確認されれば、関係各省の情報を一元化した上で、例えば内閣官房などに対応窓口ができることになるのではないか」という見立てを述べた。
23日のドイツ衛星の落下に伴う事故を想定して補償窓口をあらかじめ設置する、ということはなかったようだ。