公務員給与引き下げ難航の舞台裏 野党と連合、両者が賛成する案などない

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   国家公務員給与の引き下げをめぐり、政府が最終的な判断を迫られている。人事院は2011年9月30日、年収の平均0.23%引き下げを勧告した。しかし、民主党最大の支持団体である連合が、給与を平均7.8%削減する特例法案と公務員制度改革関連法案をセットで成立させ、人事院勧告を実施しないよう求めているからだ。

   政府は10月24日の週にも最終決定したい考えだが、東日本大震災の復興財源捻出という当面の緊急課題と、公務員制度の根幹に関わる 改革という積年の課題が絡む複雑な連立方程式を解かなければならない。

問題は給与の大幅カットの「見返り」

   国家公務員は争議権など労働基本権が制約されているため、代償措置とし人事院が民間を参考に給与水準を国会と内閣に勧告する。政府は勧告に沿って給与法改正案を国会に提出する。12月1日支給のボーナスに間に合わせるため、11月末までに改正案を成立させる必要がある。

   他方、政府は2011年、東日本大震災の復興財源捻出に向け、勧告に基づかずに給与を2013年度までに平均7.8%引き下げる特例法案を6月に国会に提出している。これで、国家公務員の年間給与総額3兆7600億円のうち2900億円をカットし、復興に回せる計算だ。ちなみに、人勧実施では 120億円しか捻出できない。

   問題は、給与の大幅カットの「見返り」だ。連合の同意を得るため、給与などを労使交渉で決めることができる「協約締結権」の付与を盛り込んだ公務員法案を併せて成立させる約束をした。連合にとって労働基本権回復は悲願。そのためには、人勧を大幅に上回る給与引き下げも飲んだわけだ。労働基本権回復は、民主党の2009年衆院選の政権公約(マニフェスト)にも明記されている。

   だが、ねじれ国会の下で審議の見通しは全く立っていない。協約締結権付与に、自民党は「将来的には公務員給与の引き下げが難しくなりかねない」などと難色を示しており、公務員改革法案成立は容易でない。

「人事院勧告の見送り濃厚」報道が出始める

   政府は給与関係閣僚会議での議論を始めているが、選択肢として、人勧のみ実施するか、人勧を無視して特例法案をあくまで成立させるか、まず人勧を実施した後に特例法案の成立も図るか――などが考えられる。さらに、人勧を実施し、7.8%引き下げも実施する場合、①人勧を実施した上で勧告分を差し引いた特例法案を再提出する②自民党に配慮して公務員法案を切り離し、特例法案を先行して処理する――といった打開策も浮上している。しかし、いずれの場合も、協約締結権付与の公務員法案成立の見通しは不透明で、どんな「折衷案」をまとめても、野党と連合の理解を同時に得られる保証はない。

   ここにきて、「勧告の見送り濃厚に」(10月16日共同通信社電)、「人勧実施見送り 調整」(19日読売新聞)など、観測気球とも思える報道が出始めている。「人勧より削減幅の大きい特例法案を出しているのだから、人勧を実施しなくても、直ちに憲法に反するということにはならない」(政府筋)という理屈のようだが、ことは労働基本権制約の代償だけに、人事院はこうした政府サイドの動きに強く反発する。タイムリミットが迫る中、野党と連合の間でどう決断するか。民主党はマニフェストで「2013年度までに国家公務員の総人件費2割減」という目標を掲げているだけに、 野田佳彦首相は難しい判断を求められている。

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