米国「新聞の危機」下
多角化した事業の稼ぎが新聞支える ワシントン・ポスト

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報道は慈善事業ではなく、あくまで営利事業だ

   グラハム親子に共通する企業哲学は、報道は慈善事業ではなく、あくまで営利事業でなければならないということだ。そのために新聞が好調な時期に余剰資金をM&Aに力を注ぎ、現在の多角化した事業形態を築き上げたわけだ。カプランは84年に買収したが、90年代後半に大規模な投資を実行し、その効 果が表面化したのは00年以降である。

   現在、ワシントン・ポストの新聞部門を仕切っているのは会長の姪にあたるキャサリン・ワイマス氏である。思い切ったリストラや人事で経営者としての手腕を発揮しているが、新聞不振の即効薬はないと主張する。プラットフォーム・アグノスチズムを含めて試行錯誤する以外に方法はないということなのだろう。その意味で、ワシントン・ポストカンパニーという優良企業を親会社にもつワシントン・ポスト紙は、他紙よりも恵まれている。じっくり腰をすえて21 世紀の報道のあり方を追求できるからだ。

   「新聞業界のアマゾンはまだ出現していない」とグラハム会長は語る。それだけにワシントン・ポストにもチャンスがあるわけだ。「わが社にはワシントン・ポストに関連して特別なミッションがある。ワシントン・ポストが卓越した新聞であり続けることです。そのためにポストはビジネスとして成立しなければならない。母もそう思ったし、私も確信している。利益を出さなければ駄目だ。そうすれば記者や編集者を雇える金が出てくる」と同会長は筆者に語った。

(在米ジャーナリスト 石川 幸憲)

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