ソフトバンクの孫正義社長と多くの地方自治体がぶち上げた「メガソーラー構想」が急速にしぼんでいる。
東日本大震災後の福島第一原子力発電所事故の影響で、原発に代わる自然エネルギーとして一躍脚光を浴びたものの、広げた「風呂敷」があまりに大きかったようだ。
「当初の話はかなり消えかかっている」
メガソーラー構想にあたって、孫社長は当初国内10か所以上で1か所80億円もかかるとされる20メガワット級の発電所をつくると宣言していた。
ところが、さすがに「20メガワット」のソーラー発電所の建設はむずかしいようだ。埼玉県の上田清司知事は2011年10月18日の定例会見で、「当初の話はかなり消えかかっている」と指摘した。構想が明らかになってから約5か月。上田知事は5月に、20メガワット規模のメガソーラー発電所の建設を、孫社長から打診されたことを明らかにしていた。
孫社長は建設費を約80億円と試算し、県に約1億円の負担と50ヘクタールほどの建設地提供を求めたとされる。埼玉県は現在、候補地の選定作業に入っているが、孫社長からはその後事業の枠組みなどの具体的な話はないという。
ただ、ソフトバンクは「少し行き違いがあるようです」と話す。構想について同社は、「いま、各自治体が候補地の選定に入っているところで、その後いろいろな話し合いになっていきます」と、「メガソーラー構想」の旗振り役ではあるが、あくまでも一事業者としての立場であると説明。
資金についても、「80億円は例にすぎません。(事業者に選ばれれば)そういったことを、これから各自治体と話し合っていくことになります」という。
「(上田知事の)発言内容については当社も確認しましたが、(知事は)ここまで(事業が白紙になると)言っていないとのことでした」と話し、「構想が頓挫しているわけではありません」と、強く打ち消した。
「メガでなくとも、候補地に応じて進めていきたい」
しかし、メガソーラー構想がトーンダウンしてきたことは確かだ。ソフトバンクが打ち出した北海道帯広市の実証実験も、当初1メガワットから、その10分の1の100キロワットの発電規模に縮小。地元から「尻すぼみではないか」との声があるが、同社は「当初からデータの収集が目的で、100キロワットの設備でも十分にデータがとれることがわかったため、その規模にしただけ」という。
同社が事務局を務める「自然エネルギー協議会」の副会長である神奈川県の黒岩祐治知事は、「メガソーラー構想」を口にしなくなった。それどころか、自ら掲げた「4年間で200万戸の太陽光パネル設置」を事実上撤回。「かながわスマートエネルギー構想」に名を換え、太陽光発電は「4年間で約55万戸分」、既設を含めても59万戸分の規模に縮小した。
岡山県は県内20か所の候補地の選定を終えているが、徳島県や秋田県など多くの自治体はまだ市町村から候補地を挙げてもらっている段階。「事業規模や事業者の選定はこれから。メガでなくとも、候補地に応じて進めていきたい」と、徳島県は話す。
ある自治体も、「当初はソフトバンクからの話もありましたが、最近は何もありませんね。まず実現することが第一歩ですから、メガにはこだわりません」という。
メガソーラー構想は「練り直し」のようだ。