光学機器メーカーのオリンパスで起こった外国人社長の解任をめぐる混乱が、泥沼化の様相を呈してきた。
解任された前社長のマイケル・ウッドフィールド氏、菊川剛会長兼社長の双方とも、メディアを通じて「言い分」を主張。それによって、解任に至る経緯などが徐々に明らかになってきた。
M&A「すごいコネがあったのでは」?
解任されたウッドフォード前社長が問題視する買収の一つに、2008年の英ジャイラス社の買収がある。ジャイラス社の買収のため、オリンパスがフィナンシャル・アドバイザー(FA)に支払ったM&A手数料は、ウッドフォード氏によると約700億円とされている。菊川会長は「実際に支払ったのは約300億円」と、日本経済新聞(10月18日付)の取材に答えている。
ただ、いずれにしても手数料としてはかなり高額に見える。
国際金融アナリストの枝川二郎氏は、オリンパスが支払ったとされる手数料について、「ちょっと法外な感じ」と指摘する。M&Aの手数料は、一般的には最低2~3億円くらい。多くても、せいぜい買収金額の1~3%程度になる。
枝川氏によれば、投資銀行や会計事務所などM&AアドバイザーにとってM&A業務は、自らリスクをとることもほとんどなく、「おいしい仕事」とのこと。M&Aは経営トップの最大の経営判断のひとつだが、そのため、「仲介役であるアドバイザーは経営者とのコネが強く、ツーカーの仲であることが大事です」と話す。
オリンパスのジャイラス社買収は、「(経営陣とM&Aアドバイザーとのあいだに)すごいコネがあったのではないか」と推測する。
オリンパス側「法的措置を検討したい」とコメント
ウッドフォード前社長の解任理由について、オリンパスの菊川会長は「独断専横的な経営で、他の経営陣と経営の方向性・手法に大きな乖離が生じた」と説明。同日開かれた臨時取締役会では全員一致でウッドフォード氏の解任を決めた、としている。
一方、ウッドフォード氏は朝日新聞(10月19日付朝刊)の取材に、「過去の企業合併・買収(M&A)などで不明朗な支出があり、菊川剛会長らの辞任を求めたところ解任された」と述べ、食い違いをみせる。
月刊誌「FACTA」にオリンパスの経営やM&Aをめぐる記事が掲載されたことをきっかけに、9月半ばから複数回、菊川会長と森久志副社長に手紙で事実関係を照会したという。さらに海外の会計事務所(プライスウォーターハウスクーパース、PwC)に調査を依頼し、「(M&Aについて)不適切な行為の可能性を排除できない」との中間報告を受けた、と経緯を語った。さらに、PwCの調査報告書を英捜査当局に提出。日本当局にも説明するという。
オリンパスは19日、ウッドフォード氏が菊川会長らに辞任を求めたことを認めたうえで、「辞任要求が直接の理由ではない」と反論。同氏に対して、「現在も取締役という立場にありながら、経営の混乱を招き、企業価値を損ねたことは遺憾であり、必要に応じて法的措置を検討したい」とのコメントを発表した。
ただ、買収問題には「会計処理は適切で、開示が必要な情報はすべて開示しています」と繰り返すだけだ。