「auショップ」に「iPhone」を売る気力が感じられないーーこんな感想がネット上にたくさん出ている。
国内で「iPhone」はソフトバンクの独占販売だったが、2011年10月からKDDI(au)が鳴り物入りで最新機種「iPhone 4S」の販売に参入。携帯電話業界の勢力図が変わるのではないか、とまで言われているのに、いったいどうしてしまったのか。
量販店はソフトバンクの予約コーナーのみ
東京・新宿にある「auショップ」を2011年10月19日の昼に訪ねてみた。ある大型家電量販店の入り口にはソフトバンクの「iPhone 4S」の販売を告知する大きな看板が何枚も並んでいたが、「au」のものは無かった。売り場に行くと、ソフトバンクの「iPhone 4S予約コーナー」はあったが、「au」は無い。なぜ予約コーナーがないのか、「au」のシャツを着た店員に聞くと、
「あちら(ソフトバンク)の方がお客さんが多いから」
という返答が返ってきた。
路面店に行ってみると、「iPhone 4S予約受け付けます」という看板を出しているショップもあるのだが、看板どころか、店内にポスターやポップすら見当たらないショップもある。その店員に「iPhone 4S」は売っているのか、と聞くと
「うちは金曜日に入荷しますので金曜日に来て下さい」
と言っただけで、予約の勧誘はなかった。
ネットには「iPhone売る気ゼロ?auショップの悲しい現状」などといったまとめサイトもあり、様々な報告が並んでいる。そこには
「今日予約しにいったら代理店なのだろうけどしきりにiPhoneをdisってAndroidばかり進められた」
「たしかに、売りたい感じがしないというか、そのへんが不安なんですよねぇ」
「急な方針転換で代理店はやってられないという状態なんやろね」
といったコメントが出ている。
iPhoneだけ売れてしまうと経営が圧迫される?
こうした「auショップ」の対応に関してフリーライターの福田和宏さんは、auショップが販売する意志や気力がない、ということではない、と説明する。これまでauはAndroid、Windows Phoneを扱ってきたがそこにいきなりiPhoneの販売をするという通達があった。
ショップの多くは直販ではなく販売代理店だ。
「iPhoneに関する知識、操作方法などの訓練が十分でない店は、『顧客のサポートをしきれるのか』という不安があり、また、どう売るのがベストかなど、戸惑っている状態なのです」
また、KDDI本社の戦略も影響していると福田さんは見ている。KDDIはAndroid、Windows Phone、そしてiPhoneと幅広い品揃えが強みだが、iPhoneに関しては、高収益となるコンテンツ収入がアップル主導になっている。そのため、仮にiPhone だけが売れるてしまうと、収支が悪くなる恐れもある。AndroidとiPhoneの販売バランスをどうするか、その戦略を徹底することが重要だ、というのだ。